幕間+コーデリア、アリッサ:おやつはいかが?
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デリアは自慢するように言う。
「どうです?凄いでしょう?」
「・・・こ、コーデリア様っ、魔法が使えたんですか!?」
「ええ。素人程度のものですが、しかし『冷却』の魔術ならこのように使えます。便利でしょう?」
「便利ってもんじゃありませんよ・・・食文化、いや、人々の生活慣習も変えるくらい便利ですって!これ皆やっている事なんですか?」
「いいえ。残念ながら魔術の使い方は国家機密となっておりまして、今は魔術の専門家の方々や一部の貴族、そして聖職者だけしか教わる事を許されておりません。社会に流通させるには、とてもではありませんが危険ですから」
「そう、なんですか。納得できるような出来ないような・・・いやそれにしてもコーデリア様、凄いです!俺魔法なんて初めて見ましたよ!」
「ふふ。ケイタクさん。此方では魔法では無く、魔術と呼ばれるのが正式な呼び方なんですよ?」
「分かりました。魔術、ですね。覚えました」「はい、大変良く出来ました」
「ンっ、ンッッ!コーデリア様、具材が詰め終わりました。後は焼くだけです」
喉を苛立たせるようなわざとらしい咳払いであったが、半ば二人だけの世界となっていた慧卓とコーデリアは意気を取り戻す。アリッサが何時の間にか最後の準備まで整えていたのだ。深皿の陶器の中に林檎などの具材やクリームが詰められ、その上にパイ生地が網ような形をして被せられていた。香りづけでシナモンなどがあればもっと良かったが、香辛料は此処でも貴重品らしく一般の市場では手に入らなかった。
アリッサは睨むような眼つきであるが、どこか拗ねているように口を曲げている風にも見えなくは無かった。コーデリアはそれに気付いて、朗らかに言う。
「ご苦労様です、アリッサ。かまどに鍋をかけていただけますか?」
「任せれよう!」
言われるなりアリッサは、丁寧に釜戸の中へ陶器を入れる。左右からの火によって陶器が炙られ、パイ生地が焼かれていく。
「出来上がるのが楽しみですね」
「はい。殿下が作られた菓子ならば、主神の御舌も蕩けさせる程の味わいとなるでしょう」
華々しい会話が聞こえるが、慧卓は材料の消費具合を見て不安の念を覚える。林檎やパイ生地などは消えても大丈夫なのだが、不要と思われていた食材まで消えていたのだ。まさか生でそのまま食べられた訳ではあるまい。となると、何処かに使われたとしか考えられないのである。
昼食後の至福の時間を待ち遠しく思っていたのに、慧卓の胸中には嫌な予感がひしひしと込み上げていく。釜戸の炎がゆらりと、不気味な影のように揺れた。
ーーーその一時間後ーーー
「そろそろですね。さぁ、パイを出しましょう」
コーデリアの許しが出た。先程から林檎が焼ける良い匂いが鼻を掠めていたので、そろそろ頃合だと
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