幕間+コーデリア、アリッサ:おやつはいかが?
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目の鍋に林檎が投入されるのを見ると、サトウキビから作られた黒砂糖を、それぞれの鍋に入れた。
「林檎に砂糖が馴染んだら、レモンの汁を入れて下さい。それで数分煮込めば完了です。俺はその間にクリームを作りますね。味が円やかになりますから」
「へぇー・・・よくそのような細やかな事を知っていますね、ケイタクさん」
「まぁ、作り方は大体知っているんです。あ、俺が自分一人で作っていたんじゃないんですけど・・・その、友達がね?」
「なるほど。ではその友達に感謝ですね。その方の御蔭で、とても美味しいパイが食べられます」
真実を告げる事は妙に憚られた。この料理というのは、『セラム』に来る以前に彼の恋人が作ってくれた事があり、慧卓はそれを見て手順を覚えたのだと。恋人がいるという事実を告げるのは吝かではないのに、何故口が動かないのだろうか。もしや彼女等から距離を置かれる事を恐れているのか。慧卓は脳裏を掠めたそんな思いをまさかと笑い飛ばし、クリームを作っていく。
彼が作ろうとしているのはカスタードクリームだ。耐熱ボウルが無いのが遣り辛いが、木のボウルでも十分に代用可能であった。裏面を見ると小さな魔法陣が刻まれており、「これは何だ」と呟くと、横からコーデリアが、「『耐熱』を意味するようです」と口を挟む。魔法陣の文字からそう読み取ったのだろう。中々博識である。
「火は後で借りるとして」と呟きながら材料を混ぜ、女性陣の様子を一瞥したその時、慧卓は思わず目を疑う。コーデリアは問題が無い。落ち着いた様子で鍋の様子を見守っている。が、アリッサこそ問題であったのだ。何故か林檎で一杯の鍋に、不要と思われていたふんだんに材料を注ぎ込み始めたのである。それも嬉々とした確信を浮かべて。
(・・・うん、気のせいだよな、気のせい)
見てはいけないものを見てしまったようだ。林檎が煮終ったのと交代で黄色に変色したクリームを火の上でかき混ぜる。魔法陣は効果を発揮しており、火のボウルは全く熱くならず、しかし中身だけが熱で蕩けていった。、
一通りの準備が終わると、慧卓はパイ生地を取り出す。しかし火の近くであるため、妙に温い。この温度のせいで味が変わってしまう恐れがあった。
「ああ・・・パイ生地ぬるいなぁ。冷えてれば楽なのになぁ」
「ならば、私にお任せあれ」
コーデリアはそう言うと、パイ生地を未使用のまな板の上に置いて指先を向けると、聞き慣れぬ複雑で流暢な言葉を紡ぐ。そうするとどうであろう。彼女の指先から冷気のような煙が漂い始め、パイ生地を覆い始めたではないか。
仰天する慧卓を前に、アリッサは誇らしげにそれを見守る。やがて煙が消えると、慧卓は恐る恐るパイ生地を触った。まるで自然解凍したかのようにパイ生地は冷たく、指で簡単に形を崩せるほど柔らかであった。コー
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