暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア、アリッサ:おやつはいかが? 
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いく。まるでド素人が断崖絶壁を素手で下るかのような非常に危なっかしい手付きであったが、しかしそれに反して皮は丁寧に剥かれていて、二周するくらいまで続いていた。本当にそれで大丈夫なんだと驚きつつ、慧卓も林檎の皮を剥き始めた。
 一応パイは、人数としては5・6人分を想定して作るため、林檎は多めに切らなければならない。時折、実が多く付着した皮を頬張りしゃきしゃきと歯の間で音を立てさせながら、林檎の皮を剥き、そして一口大且つ薄切りに刻んでいく。一通り終わると、刻まれた林檎で木のボウルが一杯になってしまった。王女は手を拭きながら言う。

「さてと。林檎が終わりましたから、後はこれを鍋に入れて軽く炒めて、煮込みます。それが終わったら容器に入れて、パイ生地を被せしょう」
「へぇー・・・被せるんですか」
「ええ、私が以前作ったのも、こういうやり方でした。パイ生地の中に林檎を沢山詰めるんです。・・・あっ、なぜあるのかわかりませんけど、豚肉も混ぜてみます?」
「いやいや、甘いものは甘いもので統一しないと、味が滅茶苦茶になりますよ。豚肉は魚と一緒だと美味しいんですがね、今は林檎ですから。・・・そうですね・・・あ、レモンなんて美味しそうです」
「あっ。それ、私が買ったレモンです」
「良い選択です、コーデリア様。林檎とレモンの酸味が合わされば、とても甘味のある味に仕上がります。私が購入した、この南部産のサトウキビの砂糖も一緒に使いましょう。・・・結構高かったんだよな、これ。しかも薬屋にあったし」
「高いのは当たり前です。この『セラム』では、砂糖はとても万能なお薬ですよ?これを水に溶かして飲めば、飢えを一月凌げると言われているくらいです」
「そうなんですか・・・いやぁ、つくづく実感しますね。ここが異世界なんだって」
「ふふ。常識の差異に驚いてばかりでは、立派な騎士にはなれませんよ?」
「俺騎士になるなんて言ってないのに」

 そう言いながら二人は鉄鍋を用意する。しかし入れてみる段で分かったのだが、思ったより林檎が多く、鍋一つではすべての林檎が煮え切らない可能性も無視できなかった。

「量が多いから、鍋は二つに分けましょう。ケイタクさんは其方の鍋を担当してください」
「分かりました」
「王女様、私が!私が代わりにやります!熱いと大変ですかね!」
「そ、そうですか?なら、お任せしますね」
「と、言う訳だ。ケイタク、代われ」
「出番が欲しいからって、無理やりな・・・」

 今まで見張りに徹して様子をちらちらと見るだけに留まっていたアリッサだが、遂に我慢出来なかったのか知らぬが、勇んだ様子で鍋の持ち手となり、手際よくかまどの火を点ける。妙に晴れやかなその表情を見ると、まるで主人の気を惹かんとする犬の様に見えなくもなかった。
 慧卓は用意された二つ
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