暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア、アリッサ:おやつはいかが? 
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ーーー買い物と昼食を終えた後ーーー


 太陽が大地に正午の時を告げてから、一時間ほど経った頃か。その日一番の暑さが街を照りつけ始めようとしている中、慧卓らはそれよりも一足早く、自らが宿泊する宿屋に帰還していた。慧卓とコーデリアは、宿屋の主人と料理番の快い許可を得た上で母屋と繋がる屋根付きの回廊を進んだ先の厨房へと入り、そこに買い揃えた食材を置いたのである。厨房の入口にはアリッサが立っており、関係の無い者が来ないか見張っているようだ。
 買ってきた具材は様々である。林檎は沢山であるため余ったら兵士に分けよう。パイ生地はそのままの形で商人が売っていたのが僥倖であった。他にもチーズであったり、磨り潰した胡麻のようなものであったり、レモンであったり等。よく見ると必要そうでないものも買っていたようで、慧卓は己の無駄遣いに後悔の念を覚えつつ、場を取り仕切ろうとする。

「さってと、材料は一通り揃いましたね・・・では後は作るだけですが、やり方は覚えてます?」
「ええ。少しですが記憶しております。先ずは林檎の皮を剥きまして」
「ちょ、ちょちょっ、危ないですって!」

 慧卓は慌てて包丁を持ったコーデリアの手を掴み、包丁の刃を誰もいない方へと向けさせた。戸惑うだけで危機意識の無いコーデリアを見て慄然とする。今林檎と向こうとした手付きは、うっかりすれば指の先端を切り落とすくらい急角度であったのだ。

「あ、あの、コーデリア様?包丁はそうやって滑らせるとマジで危ないですよ?指に刺さっちゃいます」
「え?そ、そうなのですか?でも、以前やった時は確かこういった手付きで・・・」
「・・・それは確かですか?」
「ええ。そうですけど?」
「・・・ちょっと失礼します」
「え?あ、ちょっと・・・」

 包丁を奪うようにして取った鞘に収めた後、慧卓はアリッサに小声で詰め寄った。

「アリッサさん。流石にあれは無いですよ・・・ちょっと勢い余って指落としちゃったー、とか笑えないです」
「だがあの方はあれで上手く出来るのだ。何の問題がある」
「問題があるかどうかじゃないんです!見ていて凄くハラハラするんです!なんかこう、思わず指の神経がキュッってくるような感じで!正しい持ち方とか教えてないんですか?王族でも刃物くらいは持つでしょう?」
「包丁と剣は別物だ」「胸張って答えないで下さいよっ」
「あの、二人とも、どうしたのですか?」
『いえ、なんでもないです』
「はぁ、そうですか。では林檎の皮は剥きましょう。早く包丁を返してください」
「指切っちゃ駄目ですよ」「切りませんって」

 どうやら王女はやる気満々、意気軒昂のようで、諦め気味に差し出された包丁を確りと握り、愉しむかのように林檎の皮を剥き始めた。まな板の上で林檎が丸裸にされて
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