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王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア、アリッサ:おやつはいかが? 
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りが王女の恥じらいを現しているようで、とても可憐で、慧卓は変な笑いが出そうになってそっぽを向いた。むぅと唸るコーデリアであったが、熊美に向き直って事の次第を説明した。通行人が物珍しげに三者を見るのがまた羞恥を煽るのか、言葉を続けるコーデリアの視線は時折通行人に向けられ、そしてすぐに逸らされた。
 熊美は大儀そうに「なるほど」と前置きしてから言う。

「要約すると、御二人はアップルパイを作りたいと。そのために買い出しに行っているのだと」
「だからそう言っているじゃないですか」
「事情はよく分かりました。若い方々が午後の楽しみのために張り切っておられるという訳ですな。宜しい。ならばこの羆めが一肌脱いで差し上げましょう」
「「え?」」
「この御金で材料を購入なさい。荷物持ちは私がやらせて戴こう」

 そう言って熊美は懐から紐で縛った皮袋を取り出して慧卓に投げ渡す。受け取った慧卓はその見た目に反して来る重みと、じゃらじゃらと擦れる金属音にたじろぐ。中を確かめると、鋳造されて発行されたばかりであろう、新品のモルガン金貨が五枚入っていたのだ。額面で見るなら500モルガンであるが、品質の悪い悪銭と並べられた場合、この新品の価値は更に跳ね上がるだろう。いわばこれは額面以上の価値を持つ金貨なのだ。
 そんなものを渡された慧卓は動揺を隠せなかった。

「こ、こんなに沢山・・・そんな、悪いですよ!こんなに良いものは、熊美さんが使うべきです!」
「気にしないの、慧卓君。それは盗賊の首魁を討伐した報酬みたいなもの。いわば臨時収入よ。別にすぐ消えた所で、私が苦しむ話ではないわ。それよりもこの御金で仲間や、私を慕う人達が喜んでくれるのなら、私は遠慮なくそれを手放せる」
「熊美さん・・・」

 若き二人は感動したような眼差しを熊美に向けた。これ程の大金を仲間の喜び、ただそれだけに手放す事が出来るとは。この漢気はとても若い人間には出来る芸当ではない。貫禄と優しさを併せ持つ、漢の心を持つ者だけが出来る業であると、慧卓は直感のように確信した。
 熊美は惚けたままの慧卓らから手荷物を取ると、それを楽々と肩に担ぐ。本当に荷物持ちとして徹する気なのだろう。この人の真摯さは、深々とした海溝よりも深いものであろう。

「さぁ、早く行きなさい。他の御客に先を越されて材料が買えなくなっちゃ、適わないでしょう?」
「・・・有難うございます!本当に有難うございます、熊美さん!・・・じゃぁ、コーデリア様。行きましょう!」
「はい。・・・この御恩は忘れません。クマミ様」

 慇懃な態度を取って二人は頭を下げると、大事そうに金貨の入った袋を抱えて再び露店漁りを開始する。それでもどことなく遠慮気味な手付きであるのに熊美は苦笑すると、彼らの意気を煽るべく、泰然として歩を進ませた
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