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王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア、アリッサ:おやつはいかが? 
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って、至福を感じさせるものとなっていた。
 コーデリアが心配そうに尋ねる。

「あの、どうですか?味とか、平気ですか?」
「・・・最高。最高です。独り占めしたくなるくらいです」
「ほ、本当にですか!?良かった・・・また美味しく作れた」

 彼女の顔に華やかな太陽が現れた。身も心も現れるような可憐な笑みであり、胃を蔓延している筈のあのどどめ色のパイの味が、不思議と気にならなくなってきた。この笑みを見るためなら喜んで死中に飛び込んでいける。勿論冗談であるが、しかし純粋な大人をその気にさせる程の魅力的な表情であった。
 余裕を取り戻した慧卓は、未だテーブルに突っ伏して息を吹き返さぬ者達を見て、同情の息を漏らす。

「気絶した彼らは、冷えたパイしか食べれないわね。残念」
「いえ。後で私が魔術で温め直しておきます。そうすれば彼らも喜んでくれますから」
「ああっ、うんめぇ・・・これ、凄い美味しい・・・」
「そ、そんなに褒めなくても、何も出ませんよ?もう・・・本当に幸せそうに食べますね。牛みたいです」
「だってこれ、本当に美味しいんですよ?ほら、王女様も一口、あーん・・・」
「えぇっ!?ま、またですかぁ!?」

 前日の祭事の焼き直しである。口元へ差し出されるパイを見て、コーデリアは「あうあう」と口を動かした後、自棄になったかのようにパイを齧った。歯で噛みしめればその分、芳醇な果実の味わいが彼女の舌に流れていった。

「ね、美味しいでしょう?」
「・・・我ながら、とても上手くできています・・・恥ずかしぃなぁ、もう」

 間近から慧卓に見られ、コーデリアは恥ずかしがるようにそっぽを向いた。その微笑ましき反応に慧卓も頬を綻ばせて、割と余裕ありげに口元を指で拭う。火を通した林檎の果汁は、舌触りがとても良く、新鮮な牛乳が欲しくなる控えめな甘さが特徴的であった。
 ロプスマにおける慧卓らの珍事は、これを最後として収束していく。尚、街に赴いたアリッサは無事に料理本を手に取る事に成功したが、その本の求める読者の習熟度の高さに辟易し、すぐに本を投げ出したと追記しておく。



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