幕間+コーデリア、アリッサ:おやつはいかが?
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賑わいを見せる通りより離れたロプスマ一の仕立て屋、『ウールムール』から出る人影は二つ。一つは造営官であるワーグナーであるが、彼は良いものが見れたというにやけ面をしながら立ち去っていく。別の一つの影は美麗な近衛騎士であるアリッサであり、大事そうに樫製の箱を抱えながら自分の宿屋へと向かっていった。仕立て屋らしく、箱に入っているのは卸したての衣服であろう。
更に数分の後、店主や売り子からの見送りを受けながら、二人の男女が仲睦まじく出てきた。陽光の眩さに目をぱちくりとさせたのが慧卓であり、少し疲れた表情をしているのがコーデリア王女であった。
「さってと、まだ時間はあるな」
「時間って・・・何がです?」
「敬語無し。忘れてるよ、コーデリア」
「いえ、あれを続けるのは少し疲れてしまいました。・・・いえ、嫌だという訳では無いのです!でも、あの二人のせいで」
「まぁ、仕方ありませんか。あんな恰好で乱入されちゃぁ、驚きますよね」
慧卓は諦めて、敬語無しというルールを放棄した。二人きりで買い物に来たと思えば、先程の二人が尾行してきて、あまつさえ様子を覗きに来ていたのだ。王女自らが説教を叩きこんだが、流石に少し疲れてしまっている模様である。
ちなみに先程帰っていったアリッサが持っていった箱の中には、『ウールムール』で購入した慧卓用の紳士服、そしてコーデリア用のドレスが収まっている。いわば彼女は悪戯をした罰として荷物持ちの役目に就いていたのだ。貴族並に高貴な身分である近衛騎士を鼻で扱う事で、コーデリアは罪を許す事としたのだが、もし彼女が、帰宅途中にコーデリアのドレスを盗み見てにやけ面をするアリッサを見た場合、その気持ちを完全に翻す事となったであろう。
閑話休題。野暮な追尾を受けたため一息を吐きたいと思っている時に、慧卓はある事を思い出して、『時間はある』と言ったのである。慧卓は表通りへと戻りながら話す。
「それで時間っていうのはですね、まだ祭りを楽しむ時間ですよ。幸い、必要な店はまだ畳まれてないようですから。・・・うん、これは楽しみだ」
「あの、何の話をしているんですか?」
「実は以前に聞いたのですが、コーデリア様、お料理が御上手らしいですね?特に、アップルパイが得意だとか」
「え?よ、よく御存知ですね。何方から聞いた・・・あっ・・・」
「ええ、アリッサさんです。とても誇らしげに語っていましたよ」
「もう・・・何であの人はそんな所まで」
少し照れ臭そうにしながら、コーデリアは華やかに微笑を湛えた。やはり笑顔が似合う女性である。道行く見知らぬ男が思わず見惚れてしまう程だ。慧卓はさり気なくコーデリアを道の壁際にエスコートし、人の流れに揉まれないようにする。コーデリアはそれに気付いたように微笑みと共に軽く一礼をした。
慧卓は
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