幕間+アリッサ:酔いどれの悪夢 その2
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「ここか・・・」
アリッサは目の前に佇む大きな館を見上げた。二階建ての威厳のある木造建築の家で、ひっそりとした路地裏に己の存在を誇示するかのように建っていた。此処に愛しき王女を描いたバッジを盗んだ、あくどい者が居るのであろうか。いや、その者が盗んだという確信は無いのだが、兎も角として問い質す事が正義だと、彼女は酔った頭で強く信じ込んでいた。
ずかずかと進んで正門を開けると、一直線の廊下があり、突き当りに大きな扉があって衛兵らしき男が守護していた。男は近付いてくるアリッサに警戒心を向けて鋭く言う。
「おい、会員証はあるか?ねぇと通さねぇぞ」
「私はぁ・・・此処にいる者に用があるぅ。通させてもらおうっ」
「おい、ちょっと待て。そりゃあんたルール違反、って痛い痛い痛いっ!!」
伸ばされた男の腕を軽くひねりながら、アリッサは大扉を力強く開け放つ。ぎしりと音を鳴らして扉が開かれ、万雷の拍手が彼女を迎えた。室外と同じくらい暗く、館の大きさからは考えられぬ程広い室内で、まるで小劇場のような舞台を前にして平坦な床に多くの椅子が置かれ、そこに紳士的な男性達が座っているのだ。
ぱちくりと目を驚かせたアリッサであったが、拍手が向かう先は彼女では無く、あくまでも舞台上であった。丁度その時、どこからともなくスポットライトのような光が壇上に点り、一人の紳士姿の男を照らしたのだ。男は剽軽な口ぶりで言う。
『レディィスあんどジェントルマァン!お待たせしました!ロプスマ一の論壇へようこそ!先ず最初に登壇していただくのは、この街の南東部に家を構えていらっしゃり、最近は夜な夜な欲求不満に苦しんでいる、皮職人のザンパーさんです!』
再び拍手が響き、司会の男がはけると共に舞台の暗幕が横に流れた。壇上の真ん中にはピンスポに当てられた、一人の男が立っていた。怪しげな笑みと男勝りな顔立ちが特徴の男だ。毛織物のシャツに革製のベストを羽織り、麻のズボンと革製のゲートルを履いている。男は上品な口調で話し出す。
「こんばんわ、皆さま。単刀直入に申しまして、私の方から皆様にお願いしたい事が御座います。昨今、王国軍の治安維持活動のためとあってか、街道やその周辺における獣らによる襲撃の報告が、二か月前に比べて随分と少なくなりました」
そのように言いながら、男は緩やかに左右にステップを刻み、徐々に衣服を脱ぎ始めた。御約束といわんばかりに観衆がくすくすと笑い始める。両手を交差するようにしてベストを脱いで蹴飛ばし、ベルトを取って縄のようにぶんぶんと回して捨て、ステップの合間に手も使わずにゲートルを脱ぎ飛ばす。観衆は御約束の展開とばかりにくすくすと笑い始めた。
「そのため、王都近郊における街道の安全性が極めて高くなり、人の行き来がとても容易なものとなりまし
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