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王道を走れば:幻想にて
幕間+アリッサ:酔いどれの悪夢 その2
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「・・・本当に感謝してもしきれないよ。ありがとう、ケイタク殿」
「そ、そうですか。それよりも御腹に何かつめたようがいいですよ。昨日の疲労が残っていたら大変ですから」
「え?昨日って・・・私、何かしたか?」
「え?・・・あ、いや、何でもないです!さ、さて、俺はちょっと用があるんで失礼しますね!んじゃ!」

 そう言って慧卓は立ち上がり、ポケットに手を突っ込みながら外へと出て行った。下手な追及を避けるというよりかは、まるで気遣うかのような去り方である。

「焼きたての白パンです。バターと御一緒にどうぞ」
「・・・ありがとう」

 店主が持ってきてくれた白パンの香ばしい薫りが鼻を掠めた。アリッサはそれにバターを塗して、一口齧る。ロプスマ一の宿屋の朝食は、とても品の良い味を彼女の口に齎してくれる。慧卓の去り方に疑問湧き、一体何のことだろう、昨日私は何をしたのだろうと頭を悩ましながら、彼女は朝食を召し上がる。
 その後アリッサは茶を飲み干して食休みをしているうちに、自分が昨夜、口外するのも憚られるようなとんでもない酒乱ぶりを発揮したのを思い出し、自分の顔を殴りたくなるような特大の羞恥心のあまり、奇妙な呻きを漏らしながら顔を隠す羽目となってしまった。店主の白い視線が痛々しく突き刺さる、恥ずかしい朝であった。


ーーー数十分後、冒険家ギルドの受付ーーー


 常日頃より賑わいを見せる街の通りは、今朝から急に始まった屋台の数々に驚き、喜ぶ人々によって埋め尽くされ、好奇心が好奇心を、噂が噂を呼んでまさに飛ぶような速さで賑わいを見せていた。取り分を何とか回収しようという屋台の商人らの宣伝を請け負った売り子が、それぞれ声を掛けて人々の背を叩き、自分らの店へ追いやろうとしている。
 商店と同じように通りに面していたロプスマの冒険家ギルドでは、通りの賑わいから避難してきた野良の冒険家や傭兵らが詰めており、此処も何時も以上に混んでいる。主な話の内容は突発的な祭事についてだが、日々の生活の糧を如何にして稼ぐかという事も語り合っているようであった。そして一部の者達は、圧倒された小鹿のような眼つきで受付に立つ大男を見詰めていた。

「ハボック様から窺っております。『鉄斧のカルタス』の討伐、お疲れ様でした。どうぞ報奨金をお受け取り下さい」
「ああ、ありがとう。・・・ふむ、ではこれで祭りを楽しむとするかな」

 その者とは、熊美であった。先日の山賊討伐についての報奨金が貰えると、朝方ハボックより言われたため、遠慮なくそれを貰う事にしたのである。自分の体躯と恰好、王国軍正式採用の鎧一式で用意できる最大サイズ、ゆえにこのギルドに居る者達から畏怖に近しい視線を浴びせられているが、その貫禄のある羆のような表情に全く動揺は見られなかった。戦場でその程度の些末
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