幕間+アリッサ:酔いどれの悪夢 その2
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着用する。その上から鎧を着込み、脇に剣を装備しようとした時だ。ふと手拭が置かれていたキャビネットに、何かきらりと光るものが置かれているのに気付く。目を凝らしてそれを見て、アリッサは驚愕した。それは今自分が追い求めていたバッジであったのだ。急いで駆け付けてそれを手に取ってみるも、手に伝わる重みや感触も、そしてバッジの美しき女性の横顔も記憶通りのものだ。贋物ではない、本物だ。
「・・・よかった、嗚呼、よかったぁ・・・」
途端に全身の過剰な力が抜けるようであり、アリッサは安堵の内に寝台に、脱ぎ捨てられた衣服の上に寝転んだ。目前でバッジを引っ繰り返したりピンを弾いたりしてみる。バッジはまるで光の粉が弾けているかのような輝きを放っている。明らかな錯覚なのは分かっているが、今はそう思っていたい気分なのだ。これを握っているだけで嫌な記憶も体験も、全て浄化出来るような漠然とした確信が胸中にあった。
穏やかに寝台に寝転んでいたが、ふと階下で誰かの笑い声を上げているのに気付く。もしかしたら誰かが起きて、朝餉でも食べているのかもしれない。そう考えながらアリッサはバッジを大切そうに懐へ仕舞い、湧き上がってくる食用を片手に階下へ降り立った。窓辺の席で、寝起きの茶を啜る慧卓の姿があった。彼はアリッサに気付いて淡く笑みを浮かべる。
「おはよう御座います、アリッサさん」
「おはよう」
「王女様はまだ寝ていらっしゃいます。・・・今、朝食を作ってもらっているので、ちょっと待っててくださいね」
「ああ、すまない」
アリッサは向かいの席に座り、ふぅと人息を吐く。そして外から俄かに伝わってくる、盛り上がったような人々の声に疑問を抱き、それはすぐにある喜ばしい確信へと繋がった。
「もしかして、外は?」
「ええ。祭りが行われています。アリッサさんの御蔭ですよ」
「そ、そうか?私だけではなく、他の皆も頑張っただろうに・・・それにしてもよく商人達は納得したな。出費が凄いと思っていたのだが」
「ミシェルさん達曰く、脅せば何とでもなる、らしいです。まぁどっちにしろ、造営官や商人ギルドのマスターから協力するよう言われたら、動かない訳にはいかないでしょうね」
「そうか、ハボック殿も上手くいったのか・・・。ところでだ、ケイタク殿。私の寝室にこれがあったのだが」
そう言ってアリッサはバッジを見せる。覚醒していく頭が徐々に記憶の細部を思い出していった御蔭で、寝る直前、慧卓がバッジを探しに行った事を思い出したのだ。同時に自分が泥酔状態であった事も思い出したため、少しばかり羞恥心も感じていた。
慧卓はきょとんとしてバッジを見ていたが、照れたように視線を逸らす。
「駄目ですよ、大切なものなんだから管理も確りしないと。結構大変だったんですからね、探すの」
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