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王道を走れば:幻想にて
幕間+アリッサ:酔いどれの悪夢 その2
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女に掛布団を掛けてやった。アリッサは牧場の子羊の如く穏やかな瞳をしてうつらうつらとさせながら、慧卓に視線をやった。

「けいたく・・・ありがと」
「はいはい。お休みなさい、アリッサさん」

 そう言ってその場から去ろうとしたが、慧卓は欲求に耐えられず、彼女の髪を軽く撫でてやる。ひょっとすれば顔以上に大事かもしれない女性の命に触れられても、アリッサは特に抗する様子も見られず、瞼を閉じてそれを甘受していた。これも泥酔が為し得る寛容さなのだろうか。
 心地よさげに息をし始める彼女を見て、安眠の邪魔をしないよう、慧卓は音を立てぬように部屋を出て行く。数分後には室内に鈴虫の羽音よりも小さな寝息が立ち始めた。長きに渡る捜索活動は、こうして慧卓に引き継がれるのであった。


ーーー翌日、朝ーーー


 小鳥が囀る音でアリッサは目覚める。彼女は瞼を重たそうに擦りながら欠伸をして、ゆっくりと身体を起こす。窓から差し込む日差しの眩さに目の内をちかちかとさせた。日光の傾きから見るに、まだ一部の一般的な家庭では朝餉が終わっていないような、割と早い時間帯のようだ。

「・・・あれ。朝・・・?」

 ぼぉっとしながら明るい光を浴びていたが、徐々に意識をクリアにさせていき、自分の現状に気付いていく。全く自覚の無いうちに自分の宿屋に戻っており、更には自室へと寝かせている。鎧一式は外されて部屋の隅に置かれ、今着ているのは昨日から着ている白の薄着だけだ。傍のキャビネットの上には寝汗を取るための手拭がの上に置かれており、用意して時間が浅いのか水気を帯びていた。
 あまりに穏やか過ぎる環境に惚けたままであったが、気を取り直して昨日の行動を思い出そうとする。確か造営官の館から帰る途中、酒屋に立ち寄って酒を煽った事のだ。そこから先を思い出そうとしたのであるが。

「あれ・・・昨日、何をしていたんだ?」

 そこから先が余りに不明瞭過ぎて、自分が何をやっていたのか端々としか思い出せないのだ。昨日、自分はどうにも奇怪な行動をしていたような気がするのだが、その部分を思い出そうとしても煙霧が掛かったように記憶がはっきりとしない。寧ろ何か、思い出してはいけないものがあるように思えてくるのだ。大事な何かを失ったような気がするのだが、アリッサは記憶を採掘する事を諦めた。
 他にも何か忘れてはいないかと寝台の上でうんうんと唸っていたが、漸くそれを思い出してアリッサは瞳をぱっと開いた。何か特別な理由でバッジを紛失してしまったのだ。コーデリア王女の横顔を描いた、『セラム』にたった一枚しかないバッジを。

「っ!そうだ、バッジ!!」

 アリッサは一気に覚醒して寝台から起き上がり、手早く身支度を整える。汗で湿った薄着や下着は全て脱ぎ、寝汗を手拭で拭ってから、新しい着替えを
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