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王道を走れば:幻想にて
幕間+アリッサ:酔いどれの悪夢 その2
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な視線は浴びまくっていたためだろう。中には挑戦的で刺々しいものもあるというのに、この余裕ぶりは流石といった所だ。
 報酬を受け取った熊美は、通りの混雑を回避するために路地を通って宿屋に向かう心算であった。祭りを愉しむのにこんな重たい鎧は不要であるだけでなく、無粋であった。地べたに座る浮浪者に銀貨を一枚投げながら悠々と歩いていると、路地の角を折れて此方に近付いてくる人影が見え、それがすぐに慧卓であると分かった。何やら重たそうに、雁字搦めに縛り上げた男を引き摺っている。

「あら、どうしたの?慧卓君」
「ああ、熊美さん。ちょっとこいつをとっ捕まえまして、裏路地を引き摺ってきたんです」
「こいつって・・・あらあら、まぁ」

 熊美は呆れ苦笑しながら頭を振った。亀甲縛りにされているのは、無駄に男前な面構えをしたほぼ全裸の男だ。恍惚としたように涎を垂らしているのは一体なぜだろうか。

「変態ね」
「ええ。猥褻物陳列罪です」
「どういう経緯でこいつを引き摺っているの?」
「昨日の夜、探し物をしている最中にこいつを見付けましてね。なんかその時から既にボコされた後みたいだったんです。それで一応調べてみたら、こいつ、俺が探しているものを持っていましてね。んで、それを取るついでに衛兵に引き渡そうって思いつきまして」
「はぁ・・・あなたも意外と苦労しているのね」
「まぁ、軽い御仕事みたいなものですよ。んじゃ、ちょっと行ってきますね」
「ええ、いってらっしゃい。・・・意外と力持ちなのね、あの子」

 ずずずと引き摺られていく男を見ながら、熊美は慧卓の意外な逞しさに少しばかりの感心を寄せた。
 その日、衛兵所で外来者用の受付をしていた女性衛兵は、引き摺られながら来訪した変態の恥部を見て、今生最大の黄色い悲鳴を上げたらしい。



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