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王道を走れば:幻想にて
幕間+アリッサ:酔いどれの悪夢 その1
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、光に反射して金色のように見える。凛々しさを失わぬ顔立ちの一方で、その碧の瞳は冷静さを欠いていた。

「どうしようっ、あれをなくしたら、私・・・!」

 女性は荒々しく道を歩きながら、うっぷとばかりに酒臭いげっぷを漏らす。その身体もどこか酒臭いもので衣服もやや乱れており、足取りもどこか危うい。ほとんど泥酔に近い状態である女性は、普段なら見せぬ弛み切った姿で夜道を歩いていた。
 彼女を知る者がこれを見れば、驚くやら呆れるやらでこう言うだろう。『アリッサさん、何をしているんですか』と。それに対して彼女はこう答えるであろう。『大事なものを探しているんだ』と。


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 時は一刻ほど遡る。まだ太陽がほとんど水平線の向こうに沈んでおり、夕暮れと夜が入り混じったような濃紺の空が頭上に広がって涼風を吹かし、羊毛のような雨雲をどこかへと運ばんとしていた頃合であった。ロプスマの街、北部に立派に構えられた一棟の館に、アリッサは足を運んでいた。そこはロプスマの造営官が政務を行う場所であり、同時に造営官の家となっている場所でもあった。
 一々尋ねるのも無粋な役人好みの一級品の家具に囲まれ、見事に設えられた重厚な机を挟んで、アリッサとロプスマの造営官、ワーグナーは対峙していた。といっても緊張感ある空気が流れている訳では無い。寧ろ友好的で、落ち着いた笑みが二人の顔に浮かんでいた。

「御話、十分に理解しました。喜んで祭事の準備に取り掛かりましょうぞ、アリッサ殿」
「それを聞けて何よりです、ワーグナー殿。このような時間に尋ねた無礼を快く許してくれた上に、更に我々のおこがましき要求を呑んでいただけるとは。流石は文官の身で騎士に昇進された方だ、寛容でいらっしゃる」
「とんでもない。私としても街を発展させるために、何とか知恵を絞らんと苦心していた所なのだ。そんな時、あなた方王国軍と、コーデリア王女殿下がいらっしゃったのは正に運命というより他ない。是非、あなた方の案を受け入れたいと思う」

 目前に座るカイゼル髭を蓄えた中年の男性、ワーグナーはにこりと微笑んだ。五十を越えぬ若さで、商人の支配にあるという風評も免れぬロプスマの長となる責任を受けた男は、至って温厚で、また論理的な男でもあった。実務能力の高さで証明したこの男性は、前線に一度たりとも立たずして、その仕事ぶりへの評価から騎士へと叙任された経歴を持つ。いわば文官としての出世街道を全うしている人間ともいえよう。
 彼はアリッサの話の間、時折目をそらしては考え込むように一点を見据え、アリッサを見返す動作を繰り返した。彼女の話を聞いて現状把握している諸物資の総量と稼働量・動員可能な人員の数などを、アリッサの案に当てはめて、その実行の現実性・可能性などと比較したのだろう。彼が快諾したのはそ
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