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王道を走れば:幻想にて
幕間+アリッサ:酔いどれの悪夢 その1
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、この暗い路地に通りかかろうとしていた時でした。ぬっと一人の男が現れて、おもむろに身体を覆っていた外套を肌蹴させたのです。そこから現れたものは・・・嗚呼っ・・・なんておぞましい・・・」

 娘は再びわんわんと泣き出す。アリッサは言うも憚られる怖ろしき男の所業を想像して身震いすると、凛々しく娘の手を両手で握った。娘は一瞬嫌そうに顔を歪めるも、すぐに同情を誘うようなそれに戻った。

「騎士様・・・」
「女の敵だな、現れたのは」
「はい!とても、粗末なものでした」
「私に任せなさい。こう見えて私は近衛騎士だ。剣捌きならその女の敵に後れを取る事など有り得ん。私が必ずや、そいつを退治してやろう」
「ああっ!何と輝かしい瞳でしょうか!騎士様!この哀しき運命を逃れるには、酒臭いあなたに頼るしかないのです!どうかその男をひっとらえて、あなたの吐瀉物を思う存分かけてやってください!」
「任されよう!その男は何処に向かわれたのだ?」
「この路地をまっすぐ!どうか御注意ください。路地の奥には、夜な夜な、奇怪なパーティが行われる館があるのです。もしかしたら、男はそこから現れたのかも」
「館だな。分かった。ではそこを当たってみるとしよう。ではさらばだ」

 アリッサはすっと立ち上がると、葡萄酒の残り香を口から漏らしながら意気揚々と路地へ進んでいく。後ろ姿が見えなくなって軍靴の音が聞こえなくなると、町娘は一気に顔を歪ませた。 

「ああっ、きっつ。なにあの女。マジで酒臭かったんですけど」

 まるで汚物を唾棄するかのような視線で娘は路地の方に侮蔑の視線を送る。暗い夜道を歩くアリッサの目は、遂に獲物の尻尾を捉えたような喜びと、それを屠る事への強い意志が宿っており、猫のように瞳をぎらつかせていた。


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