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王道を走れば:幻想にて
幕間+アリッサ:酔いどれの悪夢 その1
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一歩大きく踏み出して、アリッサは横殴りに蹴りを炸裂させた。頬に爪先を食らって奥歯を砕かれた男は、悦びを浮かべたまま転げ、床に落着する。鞭を振るっていた女はびくりと目を開いていたが、しかしどこか納得したように頷いた。

「なんだよ、あんた。交代かい?まったく、三人でやるなんて聞いてないよ。まぁいいわ。ちょっと疲れたから、あたしは休んでるよ」
「おい、こいつの荷物を知らないか?」
「枕の上。ナップザックがあるよ」

 女の方は好き者ではないようである。疲れたように伸びをする女を尻目にアリッサはバッグを荒々しく、盗賊のように漁る。全てのポケットを調べ、中身を引っ繰り返して探して回り、アリッサは赤ら顔に再び絶望の表情を浮かべた。

「・・・な、なぁ。一つ尋ねるが」「なんだい」
「この男、此処に来た時、何かを自慢していなかったか?たとえば・・・綺麗なバッジを拾ったとか」
「いんや、全くしていなかったね」
「・・・そう、か。邪魔したな。もう帰ってもいいぞ。こいつは今日は起きないだろうから」
「そうなのかい?ま、いいか。んじゃ、お疲れ様でしたー」

 女は手早く鞭を仕舞って外套を衣服を着ると、そそくさと部屋を出て行った。アリッサも暫し茫然としていたが、そのうち我に返って立ち上がり、ふらふらとしながら部屋を出て行く。床に落ちた男はそのみすぼらしい顔に、至福の笑みを浮かべて倒れていた。
 亭主の声を受けながらアリッサは店外に出る。誰もいない夜道を歩いていくにつれて、酔っている癖に濁っていない碧の瞳に涙が浮かんでくる。

「何処にいったのだ・・・私のバッジはぁ・・・」
『いやぁぁぁっ、変態ぃぃっ!!』
「・・・クソが。こうなったら虱潰しに調べてやる・・・」

 どこからか響いてきた女性の悲鳴に、アリッサは再び意気を取り戻す。悲鳴は通りを進んだ方から響いてきた。探してみると暗い道の半ばにか弱そうな町娘がしゃがみ込み、涙を流していた。

「ひっく・・・うえっ、気持ち悪・・・」

 片手を家の壁に、片手を口にやってアリッサは娘に近付き、そっと地面に膝を置く。鎧の鳴る音で娘は、赤くなった目を向けてきた。

「どうしたんだ、お嬢さん。どうしてそんなに涙を流しているのだ。私は騎士だ、か弱き女性の助けとなろう」
「うわ、酒臭っ!
 ・・・いえ、聞いて下さい、騎士様!私この近くに住んでおります砥ぎ師の娘なのですが、先程まで友人たちと会食をしていたのです。王国内では珍しい珍味が出る会食でして、まぁその珍味というのも絶滅が危惧される動物を捌いたものらしいのですが、でも人間以外の動物が絶滅しようと私達には関係ありませんよね。所詮は誰かの庭で飼われるか、食物連鎖の定めに消えるだけなんですから。
 それでその帰り道である此方を通っていたのですが
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