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ヘンゼルとグレーテル
第二幕その四
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ます。けれど鍵のことは全然気付いていません。二人は一瞬ヒヤリとしましたがそれを見てほっと心の中で胸を撫で下ろしました。
「太ったかい?指をお見せ」
「うん」
 鍵のことを見て魔女の目が悪いのに気付きました。そして細長いクッキーの棒を出します。
「何だい、全然太ってないじゃないか」
 魔女はそのクッキーを触って言います。
「しかも硬くて。これじゃあどうしようもないね。まあいいさ」
 またグレーテルの方を振り向きました。
「竈はわからないんだね」
「ええ」
 芝居はまだ続けています。
「わかったよ。じゃあ私が」
「兄さん」
 魔女が二人に背を向けて竈の方に歩いていくのを見てすぐに彼に声をかけます。
「うん」
 ヘンゼルにもそれはわかっていました。こっそりと檻から出ます。
「こんなの小さな子供でもわかることだけどね」
 魔女はブツブツと言っています。
「それがわからないなんて。最近の子供は」
 竈を開けます。そしてその中の火を見ます。
 その間にヘンゼルは檻から出ていました。そしてそっとグレーテルと一緒に魔女に近寄ります。二人でこっそりと歩み寄っていました。
「いいね、グレーテル」
「ええ」
 二人は囁き合います。それでも魔女は気付いていません。
「こんな簡単なことが。どうして。おや」
 魔女は火を見てニンマリとしました。
「いい火加減だね」
「そうなの?」
 魔女にグレーテルが尋ねます。
「ああ、これだといいケーキが焼きあがるよ」
「それじゃあ」
 グレーテルは両手を構えます。
「魔女が」
 そしてヘンゼルも。二人は動きを合せます。
「ケーキになっちゃえ!」
 魔女の背中をドン、と押しました。魔女はそのまま竈の中へ放り込まれました。
 二人はすぐに竈を閉めてしまいました。これで悪いお菓子の魔女は自分が竈の中に入ってしまったのです。
「やった、やったぞグレーテル!」
「ええ、兄さん」
 助かった二人は笑顔で抱き合います。
「悪い魔女は竈の中!」
「もうこれで食べられないで済むのね」
「ああ、悪い魔女がいなくなったからね」
 二人は抱き合いながら竈を見ます。そこにはさっきまで魔女がいました。

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