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剣の丘に花は咲く 
第九章 双月の舞踏会
第三話 一時の別れ
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「ま、全くもう。し、シロウってたまにこういうことしてくるから油断が出来ないんだから。い、いきなり耳を触ってきたらびっくりするじゃないですか」

 桃色に染まる頬を膨らませ、「怒ってますよ」と言外に知らせるティファニアに、士郎は小さく頭を下げると苦笑いを浮かべた。

「本当にすまない。自分の耳を気にしているようだから、俺はテファのすっと伸びた細く長い耳は綺麗だし、今みたいに赤く染まったところは可愛いくて十分以上に魅力的だと伝えたくてな。それに胸のことも……あまり気にしなくてもいいと思うぞ。そこも十分以上に魅力的だと思うし」

 最後の方はぼそぼそっとした小さな声であったが、ティファニアの耳にはバッチリ聞こえていた。
 ぼうっと士郎を見上げていたティファニアの顔が一瞬で先程以上に赤く染まる。湯気が出るほど赤くなった顔を伏せたティファニアは、コツンと士郎の鍛え上げられた胸板に額を当てると何も言わず服の端をギュッと力強く握り締めた。
 士郎の胸板に押し付ける強さを段々と強くするティファニア。まるでそれは自分が感じる熱を相手に伝えようとするかのようで……。



「……テファ」

 小さく囁くような声でティファニアの名前を呟く士郎。

「テファ」

 ティファニアの名を呼ぶ士郎の声は段々と大きくなっていき。

「テファっ」

 何かを訴えるかのように強く激しくなる士郎の声に、遂にティファニアの顔がゆっくりと持ち上がり。

「……テファ」

 最初のように囁くような声で名前を呼ぶ士郎の目とティファニアの目が合い。



「……後は任せた」


 ふっと儚げな笑みを浮かべる士郎。
 士郎の瞳の奥に揺れる不安と恐怖に気付いたティファニアが視線をずらすと、そこには、



「だから何いちゃいちゃしてるの? ふふ……本っ当いい度胸してるわねシロウって」

 馬用の鞭を床に叩きつけるルイズ。

「流石のあたしもそろそろ許せそうにないわね」

 胸の谷間からずるりと短い杖を取り出すキュルケ。

「わたしたちの前でこんなこと……もしかしてお仕置きを期待してるんですか?」

 背中から取り出したフライパンを、何度もバットのように振り回すシエスタ。

「シロウ……ティファニアとは何でもないと言っていたのはやはり嘘だったのですね」

 調子を確かめるようにブンブンとデュランダル(鞘付き)を振り回すセイバー。

「確かにテファが魅力的なのは認めるけど、だからって姉であるわたしの目の前で堂々と始めるなんて……流石はシロウって言って欲しいのかい?」

 自分が座っていた椅子を持ち上げ何かを確かめるように色々な持ち方を試すロングビル。



 それぞれの獲物を振りかぶる
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