第十話 〜捜索〜
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敵国の人間を拉致しては犬馬の如く奴隷として扱うのが習わしのようだが、そんな下劣な民族に屈する様な我々では無い。
現に今までの戦の中で我ら同胞もその奴隷の一部として連れ去られているのだ。
だからこそ我々は苦しい中でも国庫を割き続け、ひたすら同胞を助ける為、またこれ以上同胞に手を出させない為だけに兵を出し続けているのだ。
それが我々と北国との歴史であり、払拭できない関係なのだ。
停戦は勿論、同盟などは言語道断だ。
"…我々との歴史は知っておりますな?"
"…えぇ"
"仮に我々は最後の一兵になろうとも、その信念を、同胞の恨みを忘れる事はござらん"
"…そうですか。では再び戦場でお会いしましょう"
"あぁ、何時でも参られよ"
"…では"
交渉は決裂。
短い言葉を交わし、豪統殿は我々に背を向け内宮を出ようとする。
"待たれよ、豪統殿"
"…"
だが、それを父上は制しされた。
"敵国の、しかも大将首がわざわざ敵陣ど真ん中まで護衛一人で来るとは…覚悟はして来ただろうな"
父上が宮座から腰を上げて腰から剣を引き抜いた。
そして、それを待っていたと言わんばかりに内宮にいた重鎮達も剣を引き抜く。
それもその筈。
敵国の大将が護衛一人で我が国に乗り込んで来たという事は"貴様ら何ぞ護衛一人で充分"と言っているようなものだ。
皆舐められたものだと言わんばかりに目をギラギラとさせてその瞬間を待った。
それを察し豪統殿の傍らにいた凱雲が持っていた長柄の獲物の刃から布を取り払い大薙刀を構えた。
その時の彼から怯えたなどは一切感じられず、迫り来る者全てを薙ぎ払ってやると言わんばかりの不動の面様をしていた。
その気迫に冷や汗をかいたのを今でも覚えている。
"形道雲殿…敵国の使者に刃を向けてもよろしいのですか?"
一触即発の空気の中、豪統殿が背中越しに父上に話しかけられる。
"何分、戦育ちの性分でしてな。敵国の人間相手に対する礼を私はこれしか持ち合わせておらんのだ。悪く思うな"
そう口元を釣り上げながら父上は言われた。
決定的かと思われた。
私はこれから始まる戦闘に備えて構えを更に深くする。
…だが。
"でしょうね。実を言うと私達も武官の出でしてね。わざわざ敵国まで赴いて喋るだけの役には些か心残りがありましたゆえ…"
豪統殿はゆっくりと腰から剣を引き抜いた。
"しかし、もし来られるのでしたら用心なさいませ。私はともかく、この護衛凱雲はそう安安とは打ち取れませんぞ"
"何?凱雲だと?"
明かされた護衛の名で私を含めて周りがどよめいた。
我々の所には今の北国に三人の鬼神がいると伝わってきていた。
まず、初めにこの国より北に位置する場所に住む騎馬民族、荒涼蛮の王、ケ旋
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