第十話 〜捜索〜
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乱し、皆一心不乱に逃げ惑うに決まっている。
そうなれば豪帯様を連れ帰らせるどころか、陣中に置き去りにされかねない。
そうなるくらいなら兵士達には悪いが、現状のまま私が豪帯様を陣中で見つけるまでの囮になってもらおう。
だが、きっと壊滅する前に兵士達には撤退命令が出てしまうはずだ。
洋班も黄盛も壊滅するまで気付かないなんてことは無いはず。
だから私はそれまでに何としても豪帯様を見つけ出さなければならない。
そうした結論が出た事によって私は敵味方が剣を交える中、ただ一騎誰とも剣を交えずにこうして陣中を駆け回っている。
『豪帯様!』
私は手近にある天幕を開く。
『げぇ!?』
『み、見つかった!?』
『…』
だが、そこに居たのは官軍の兵だった。
見たところこの混乱に乗じて盗みを働いているようだ。
…しかも味方の。
『で、出来心で…あれ?』
『こ、こないのか?』
命乞いをしている傍、もう一人は健気にも剣を私に向けて来る。
だが、こんな小物共に今は構っている暇は無い。
私はその天幕を後にした。
『…』
私は丘の上で敵陣内で行われている戦闘の様子を見ながら、関とのこれまでの関係を振り返っていた。
異質だ。
それが彼らと初めて会った時の印象だった。
私と彼らが出会ったのは八年前で、その頃の蕃族はまだ零とは対立しており、父と共に対北前線になっていたニ城にて零と対峙していた時だった。
"形道雲様!"
"なんだ?敵襲か?"
"い、いえ!何やら北国より使者が来ているとか…"
"…何?"
私達はこの報せに驚いていた。
元々蕃族と北の国々とは昔から対立の関係にあったからだ。
しかもその歴史はとても古くからで、零以前の烈王の時代、さらにはそれ以前にまで遡る。
それまでに何回かは外交も行われてきたようだが、それも記録に残るものは指を折る程度のものだった。
それだけに私達は戸惑った。
"ふむ…"
"ど、どうなさいますか?このまま使者を斬り捨てて…"
"いや、待て"
この時父上は伝令の提案に待ったをかけた。
"…父上、まさか北国からの使者に会われるのですか?"
"…あぁ"
"何故です!?彼ら北国との交渉など無意味です!現に今までだって使者のやり取りなど…"
"確かにそうだ。奴らとは遠い先祖の代より外交を断絶し、武力で領土を争って来た。だが、それは使者のやり取りがなかったからではないのか?"
"それは…"
"正直ワシにもわからん。今まで生きてきた中でこんな事はなかったからな。だが、断言はできない分今ここで会いもしないで使者を斬ってしまってもいいものだろうか"
"…"
"なに、心配するな晃よ。会ってみるだけ会ってみてその使者
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