第1部 沐雨篇
第1章 士官学校
006 策士とお菓子
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に彼らは仲良くなっていく。誰が言い出したか知らないが、士官学校のフロル派と言えば、この面子が主軸であった。
士官学校を出た後も、ヤンがミラクル・ヤンとしてフロルの名声を上回るまでは、フロルが頭の、フロル派として彼らは見られていたのである……。
***
最後の一つをラッピングして、フロルは一息吐いた。一つ一つを透明な袋に入れ、可愛らしいリボンをつけている。カップケーキを渡すだけならば、その必要もないのだが渡される側の子どもの気持ちを考えれば、これくらいの手間を厭わないところだった。
「これで終わりね」
「ああ、付き合ってくれてありがとう、ジェシカ」
「私も楽しかったから、いいわ」
彼女はエプロンを脱ぎながらそう言った。シンクによしかかりながら腕を組む。
「そう言ってもらえると、俺も嬉しい。このキッチンも使いやすかった。ありがとう」
「いえいえ、私も先輩の役に立てたならそれで十分よ」
彼女はにこりと笑ったが、それで十分だとは思っていないのがバレバレであった。目が笑っていない。
フロルは目ざとくそれに気付くと、誤魔化したように一つ笑った。自分のエプロンを手早く畳み、持ってきた調理器具を片付け始める。片付けている背中に、冷たい視線を感じた。
「ねぇ、先輩」
「なんだい、後輩」
ジェシカは片付けをしているフロルに近づくと、調理台にまたよしかかって、背中を反らすようにして、片付けをしているフロルの顔を覗き込む。髪の毛が広がって、微かな芳香がフロルの鼻をくすぐった。
「今度、一緒にデート、どうですか?」
この台詞はフロルのものではない。
「魅力的な提案だね」
フロルは彼女の碧い瞳にちらりと目をやって、そう言った。
「先輩は女の子がお好きよね」
「デートをする相手なら、女の子がいいかな」
「19歳の男の子と、17歳の女の子がデートするのはどうだと思う?」
フロルは一瞬、片付けをする手の動きを止めたが、すぐに動き出した。
「……お似合いじゃないかな」
「じゃあ一緒にデートしませんか、先輩」
その言葉で、とうとうフロルは片付けを諦めた。
調理台から離れて、右手で鼻の頭を掻く。?いてから、右手には小麦粉が付いていたことを思い出す。きっと鼻が白くなってしまっただろう。
「普通に考えて、両親がいない花も恥じらう女の子の家に、フロル先輩みたいな男子が遊びに来るって、他の人からだとどういう風に見えるのかしら」
ジェシカは人差し指を自分の鼻に押し当て、小さく首を傾げた。
可愛い。
「さぁ、どうだろうね」
「きっとただならぬ仲だと、思うんじゃないかしら?」
フロルは袖で鼻を拭った。もっとも、それで粉がとれたかはわからなかったが。
「一緒にお菓子を作ってるだけかもしれ
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