第1部 沐雨篇
第1章 士官学校
006 策士とお菓子
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ものもあった。
戦闘艇操縦である。
彼はどうやら人よりも三半規管がデリケートらしく、急激な宇宙軌道は彼にとって鬼門であった。平常の戦艦航行では酔いがないため、艦隊指揮に関しては支障をきたさないことが救いであったが、スパルタニアン乗りには決してなれないと教官に言われたことは、フロルにとっても少なからずショックな出来事であった。もっとも、あまりに酔いすぎて、訓練後すぐに医務室に運ばれたことから、彼自身「二度と乗るか」という思いも強かったのだが。
つまり、フロル自身の認識はさておき、この時代の彼は前途有望と評される一士官候補生であったのだ。
彼の一つ下の後輩、ヤン・ウェンリーにとってもフロル・リシャールは良き先輩であった。彼とジャン・ロベール・ラップが戦略研究科に転科したのち、先達としてよく指導したし、また私的な付き合いにおいてもフロルとヤンらは波長がよく合ったからである。
対してヤン・ウェンリーだが、彼は彼の在籍する学年においても悪い意味で有名な学生の一人であった。興味のある教科はほぼ満点をとる一方、他の教科や実習は赤点ぎりぎり、その癖、昨年度の戦術シミュレーション試験では学年首席を破るという快挙を成し遂げ、色んな意味でよくわからない変人と捉えられている。
だが彼を敵視しようとしても、そんな張り合いもなんのその、ヤンはマイペースにのほほんとしているものだから、対処に困る難物である。
表面上は学者のたまごといった毒にも薬にもならないような顔をしているが、彼を凡人と見る人間は既に士官学校にいなかった。フロル・リシャールという変人と仲が良いという事実も一役買っているだろう。
また、この時期は入学したアッテンボローや、ジェシカの父経由で知り合ったキャゼルヌとの交友を持っている時期でもあった。いずれの人物も、王道を行くというよりは愚痴をこぼしつつ少数派を気取る者たちであって、そしてフロルと気の合う仲間であった。かつては門限破りなど数えるほどしかやらなかったヤンも、この面子に巻き込まれて何度も門限破りをさせられる始末である。ちなみに、どちらかというと教官側の立場であるキャゼルヌが一緒の時は、キャゼルヌの名で正門から入ることができるため、自然門限を破る時はキャゼルヌ同伴が多くなっていったのは、キャゼルヌにとって迷惑な話であったかもしれない。もっともそのことを毎度揶揄しながらも、一緒に飲み食いに付き合っていたのだがら、独り身のキャゼルヌにとっても楽しいひとときだったのだろう。
原作ではどういう繋がりで交友を持ったのかフロルは知らななかったが、少なくともこの世界では、フロルがヤンやアッテンボロー、それとキャゼルヌの橋渡しをしたというのが実情だった。原作でも無二の関係を築いていった者たちであったので、フロルが顔合わせの場を作れば、あとは勝手
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