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鋼殻のレギオス IFの物語
二十話・後編
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 男はそう呟いた。










 グレンダンの中央部にある王宮。
レイフォンはそこにいた。

 王宮に来ること自体はレイフォンにとって初めてのことではない。老性体の襲撃時など武芸者が王宮に集められる事もありグレンダンの武芸者にとって王宮に足を踏み入れたことが無いと言う者の方が珍しいと言えるだろう。
 だが、彼らが足を踏み入れるのはあくまでも外側。ある種本当の意味で王宮とも言える内部に入ったことがある者は少ない。そこに自由に足を進めることができるのは王家の一員や天剣授受者と言った一部の人間がほとんど。例を挙げれば女王であるアルシェイラ・アルモニスが好んで昼寝をする庭園などがそれに当たるだろう。
 そんな王宮の中の一室。関係者以外が許可なく立ち入ることを許されない開けた空間。そこにレイフォンはいた。
 
 奥には装飾のされた椅子。その手前には僅かばかりの段差とそこにまで続く敷物。それを真ん中に部屋の左右に柱。
 左右には何度か見たことのある天剣が幾人か思い思いに立っている。こちらに視線を向けている者もいれば煙草を吹かしたり床に座り込んでアクビをしたりする者もいる。レイフォンの視線に気づいたその内の一人、柱に背を預けていたサヴァリスが手を振るがレイフォンはそれを無視し奥を見る。
 椅子の横には豪華な刺繍をされた服を纏い目元をヴェールで隠した女性が立っている。式典や行事を取り仕切る女王で、本物ではなく影武者の天剣だろうと皆には知られている。レイフォンも彼女のことは何度か見たことがある。
 
「……」

 特に言うことも思い浮かばない。入ってきた扉から離れるようにレイフォンは数歩部屋の中へと進む。それに合わせる様に腰につけた錬金鋼が小さく音を立てる。
 レイフォンがここに居るのは王宮への招集命令があったからだ。一人で来るようにと言われ、案内のままにこの部屋へと来た。招集の要件は聞いていないが広まった噂は知っている。見当がつかないほどレイフォンは馬鹿ではない。

「何故呼ばれたのか理解していますか?」

 静寂に澄んだ声が響く。
 女王の影武者―――いや、一応断定出来ない以上ここは女王としておこう。微かにヴェールを揺らし女王がレイフォンに問う。彼女の目元は隠されレイフォンにはその真意を推し量ることはできない。

「僕が闇試合に出ていたという噂なら」

 レイフォンが答える。
 レイフォンの表情は薄く自分でも驚く程心が落ち着いている。まるで戦場で剣を握った時のように思考は静かだ。
 だからこそ敢えてもう一つの噂は口に出さない。

「否定はしませんか? では全て真実として認めると」
「はい」

 ガハルド・バレーンを斬った。けれどレイフォンの闇試合の件は表に出てしまった。
 凄
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