二十話・後編
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夕暮れのグレンダンの街中は少しいつもよりざわついていた。
道でも店の中でも人々は話していた。語る人々は様々な表情を浮かべているが一人として楽しげなそれを浮かべていない。
それは大会優勝者の怪我によりズレたとされる天剣の授与式があるからではない。そんな活気に満ちた雰囲気ではなくそこか疑心と不安に駆られた様な澱んだ賑わいだ。
彼らが話すのは凄まじい速さで広まった一つの話題。
此度の天剣が犯罪者だという噂。
本来なら鼻で笑い飛ばすか酒の肴に骨董無形なそれを笑うかだが今回は違う。
確かな証拠と証人が出ているのだ。
「あの写真本物だ」
店に入って来た男が言う。
彼は仲間たちがいる場所に行き自分が調べてきたことを話す。
「合成の可能性も無い。写っていた場所を見つけて建物を見に行った奴もいる。実際に試合を見たっていう奴だって何人も出てる」
「マジか……。でもよ、写真は俺も見たけど仮面付けてたぞ。確証はないんじゃ……」
飲み仲間の一人が言う。だが彼自身取り敢えず言ってみたというつもりなのだろう。その言葉に強さはない。
案の定すぐに否定の言葉が帰ってくる。
「それは無い。聞いた話じゃ闇試合トップの実力だという話だ。あの背丈でそれだけの実力の背格好なんざ他にいねぇよ。何でも数年前は実際に闇試合のチャンプだったそうだ」
「確かその時の写真も出回ってるんだろ……なら、やっぱなぁ」
「ああ。信憑性は怪しいがユートノール家が今回の事を認めたという噂もある。後ろ盾だってほざいて大きく動いてる奴もいるってよ」
「なるほど、ねぇ」
言葉を濁すように男は酒を煽る。
「理由はやっぱ金、か」
「ああ、そういう噂だよ。……かなりがめついらしいぞ。金の為だけに外に行ったって話もある」
「なんだそりゃ?」
「闇試合で数年前チャンプだったのに今は違うってのは変だろ? 負けたわけでもない。勝ちすぎたせいで出禁くらったらしい。暫くほとぼりを冷ませる必要があったらしくその間に他都市で傭兵の真似事して金を荒稼ぎしたらしい。自称事情通からの男が言ってるらしい」
「自称事情通て」
「いや、調べたが確かに一年半ほど公式記録から姿を消してる」
「そういや大会で名前聞かなくなった頃が……金の亡者だな。ガキの癖に傭兵までするとかどんな考えしてんだよ」
傭兵に対して余り好意的な印象はグレンダンの住民にはない。その例に漏れず男は言葉を吐き捨てる。
友人が手を伸ばし男の分の肉を取る。取り敢えず男は内心その友人に恨み言を言いながら酒を煽り、そう言えば、と自分が聞いた話を思い出す。
「なら、俺が聞いた話も本当だろうな」
友人たちが男に目線で先を促す。
「あのガキ、試合で対戦相手を殺すつもりだったとか
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