暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
黒守黎慈とフェンサー(2) ─共に戦う者として─
[1/8]
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
「……本当に、それだけでいいのか?」
「ええ。契約さえ護って頂けるなら、この杯は差し上げましょう」
青年の前には、可憐な少女。
見た目は年端もいかないが、纏う装飾は姫君であることを窺わせる。
クスクスと笑いながら青年を見る眼には、無邪気な色を宿しつつも底知れない闇が揺蕩っていた。
傍らには白き魔獣が侍っており、青年の後ろ左右には、二対の騎士が控えていた。
人外である彼らはその一人であっても、彼には敵うべくもない化け物だ。
青年は姫君ととある契約を交わそうとしているが、承諾以外の選択をすれば残された道は死しかない。
元よりどのような条件であっても契約を結ぶつもりではあったが、彼には最初から、選択の自由など与えられていなかった。
絶対不可避の運命に囚われながらも青年は絶望など微塵も抱かず、その先にある希望を見据えて笑っていた。
契約の言葉が紡がれる。
「黒き血の盟約に於いて──」
「──此処に、御身の聖痕を受け入れる」
朱い月が世界を照らす。
彼らを囲うように浮かび上がる黒血法陣。
青年は結んでしまう。
交わしてはならない相手と。
交わしてはならない契約を。
「汝の主として──」
「汝の僕として──」
黒き月姫は微笑む。
悪戯が成功したときの子供のような、あどけない無垢なる闇の微笑。
似ても似つかない筈の彼女の姿を見て…………青年は、一人の少女を思い出していた。
「その命、魂在る限り──」
「──この身捧げ、御許に仕えることを誓う」
黒き姫君の手が、胸元に添えられた。
撫でるように左胸に手が触れる。
そのまま瞬きするかのような容易さで。
俺/オレの心臓が引き抜かれた。
「ッ…………!」
既に目覚めていたかのように飛び起き、何も考えず洗面所まで走る。
胃から胸から込み上げてくるモノを全力で抑え込みながら、洗面台に辿り着いた瞬間にその全てをぶちまけた。
「う、ぉぇ…………!!」
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
生きたまま臓腑を引き抜かれる感触。
心臓はこれ以上ないほどの鼓動でその存在を主張しているが、それでもなお拭えない生命の喪失感。
自身に解析の魔術を通して状態確認をするが、身体に異常などあるはずもない。
何故ならあれは夢の出来事で、心臓を引き抜かれたのも俺ではなくあの青年で、現実に生きる自分がどうにかなることじゃないからだ。
だが思わず身体解析をしなければ
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ