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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
黒守黎慈とフェンサー(2) ─共に戦う者として─
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と焦るほど、実感を伴う感覚だった。

(夢の記憶に同調(リンク)し過ぎて、瞬間的なフィードバックを受けたのか…………?)

 あの光景の鮮明さ、おぞましさは思い出すだけで身の毛がよだつ。

 禍々しき魔力に満ちた朱い月。
 朱色の月光に塗り潰された赤い夜。

 自然には存在し得ない、鮮血のように紅い眼の少女。

 アレは、俺が見てはいけないものだった。
 フェンサーの過去も青年の過去も、決して俺なんかが覗き見していいものじゃない。

 英雄であろうが英雄と呼ばれ崇められたナニかであろうが、彼らの人生そのものはロクなものじゃなかったはずだ。
 英霊なんてものに成ってしまうほどの人間でまともな生を送った者など、まともな死を迎えた者などほとんどいない。

 神話や伝説に語られる人間とは、その結末を悲劇で飾ることになるのが世の常なのだから。

 フェンサーがどんな過去を生きて、どんな生き様を、死に様を辿ったのか。
 それを知ろうというのなら、己自身にも識る覚悟(、、、、)を強いるべきだった。

 これからは精神防護を施して、外部不干渉を確認してから眠ろう。
 今後もしもフェンサーの過去で気になることがあれば、直接聞くことにするべきだ。

 既に何度か覗き見してしまった身分で言えることじゃないが。

「はぁ、はぁ……ふぅっ」

 あらかた胃の内容物を吐き出し、呼吸も落ち着いてきた。

 額から顎先を伝って落ちていく汗。
 蛇口を捻り、冷水で顔を洗って意識をハッキリと覚醒させる。

 夢は夢、現実は現実。

 さっきのは頭の片隅に追いやって、気分を切り替えていこう。
 そうしてタオルで顔を拭き、顔を上げた先にある鏡を見て、俺の意識が凍りついた。

「え…………?」

 いつもそこに在る筈の、俺の深緑の右眼が。
 夢の黒い少女を彷彿とさせるような、鮮血の深紅に染まっていた。

「何だ、これ」

 痛みはないし、視覚に異常もない。
 外見からはおかしなところは見当たらないし、眼球内部を視ても異状は何もなかった。

 何がどうなったのかと目蓋を擦ってからもう一度鏡を見てみると…………

「え、あれ?」

 そこにはいつも通りの眼があった。
 鏡に写った黒に近い深緑の瞳が、不思議そうに俺の顔を見ている。

 ………………今朝からあんなものを見たせいだろう。

 未だに鮮明に思い出せる夢。
 ついさっきまでやたらと気にしていたせいで、そんな幻覚を見てしまったのだ。

 とりあえず台所に行く。

 食欲は一切沸かないが、ウチのサーヴァントは食糧を要求してくる図々しい奴なので、朝食を用意してやらねばならない。

 俺が起床したことに気づいたのか、ちょ
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