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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
黒守黎慈とフェンサー(2) ─共に戦う者として─
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「……本当に、それだけでいいのか?」
「ええ。契約さえ護って頂けるなら、この杯は差し上げましょう」

 青年の前には、可憐な少女。

 見た目は年端もいかないが、纏う装飾は姫君であることを窺わせる。
 クスクスと笑いながら青年を見る眼には、無邪気な色を宿しつつも底知れない闇が揺蕩っていた。

 傍らには白き魔獣が侍っており、青年の後ろ左右には、二対の騎士が控えていた。

 人外である彼らはその一人であっても、彼には敵うべくもない化け物だ。

 青年は姫君ととある契約を交わそうとしているが、承諾以外の選択をすれば残された道は死しかない。
 元よりどのような条件であっても契約を結ぶつもりではあったが、彼には最初から、選択の自由など与えられていなかった。

 絶対不可避の運命に囚われながらも青年は絶望など微塵も抱かず、その先にある希望を見据えて笑っていた。



 契約の言葉が紡がれる。



「黒き血の盟約に於いて──」
「──此処に、御身の聖痕を受け入れる」

 朱い月が世界を照らす。
 彼らを囲うように浮かび上がる黒血法陣。

 青年は結んでしまう。



 交わしてはならない相手と。

 交わしてはならない契約を。



「汝の主として──」
「汝の僕として──」

 黒き月姫は微笑む。
 悪戯が成功したときの子供のような、あどけない無垢なる闇の微笑。

 似ても似つかない筈の彼女の姿を見て…………青年は、一人の少女を思い出していた。

「その命、魂在る限り──」
「──この身捧げ、御許に仕えることを誓う」

 黒き姫君の手が、胸元に添えられた。

 撫でるように左胸に手が触れる。





 そのまま瞬きするかのような容易さで。

 俺/オレの心臓が引き抜かれた。









「ッ…………!」

 既に目覚めていたかのように飛び起き、何も考えず洗面所まで走る。

 胃から胸から込み上げてくるモノを全力で抑え込みながら、洗面台に辿り着いた瞬間にその全てをぶちまけた。

「う、ぉぇ…………!!」



 気持ち悪い。

 気持ち悪い。

 気持ち悪い。



 生きたまま臓腑を引き抜かれる感触。
 心臓はこれ以上ないほどの鼓動でその存在を主張しているが、それでもなお拭えない生命の喪失感。

 自身に解析の魔術を通して状態確認をするが、身体に異常などあるはずもない。
 何故ならあれは夢の出来事で、心臓を引き抜かれたのも俺ではなくあの青年で、現実に生きる自分がどうにかなることじゃないからだ。

 だが思わず身体解析をしなければ
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