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GGO編ーファントム・バレット編ー
55.恐怖の黒銃
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部の超高レベルネームMobだけが持つ技だったはず。

ばさり。

と風を翻るダークグレーの布地が、混乱極まる思考を遮った。
表面がボロボロに毛羽だった長いマント。頭部を完全に覆う同色のフード。光歪曲迷彩を解き、完全に姿を現した襲撃者.......そこに存在するはずのない、あの《ボロマント》

ーー《死銃》

ペイルライダーを消し去り、前大会優勝者《ゼクシード》、大スコードロン主催者《薄塩たらこ》を殺したかもしれない、沈黙の暗殺者(サイレント・アサシン)。

つまりこのボロマント、《死銃》は、《銃士X》ではない.....?

.......キリト

ボロマントは、滑るように音もなくこちらに近づき、地面に倒れる私のすぐ前、二メートルほどの位置で停止。

しゅうしゅうと軋むような囁きが、フードの奥の闇から流れ出る。

「......キリト、お前が、本物か、偽物か、これではっきりする」

どうやらボロマントは、スタジアムにキリトがいることを知っており、私ではなく彼に話しかけているようだ。

「あの時、猛り狂ったお前の姿を、憶えているぞ。この女を.......、仲間を殺されて、同じように狂えば、お前は本物だ、キリト。さあ......、見せてみろ。お前の怒りを、殺意を、狂気の剣を、もう一度、見せてみろ」

意味が全くわからない。

まだ、スタン弾で体が動かないが、命中したのが左腕だからか、右手は頑張れば動かせそうだ。幸い、すぐ近くに副武装として腰に下げたMP7短機関銃のグリップがある。握り、上を向け、トリガーを引けば、この近距離なら倒せるかもしれない。

(動け!動け!)

指先がグリップに触れる。

ほぼ同時に、死銃もマントから空の左手を持ち上げ、ペイルライダーの時のように十字ジェスチャーを行う。

今まで気づかなかったが、【●REC】という文字列が赤く点滅しており、この光景は、この世界と外の世界に中継されている。

十字を切り終わった死銃が、右手をマントの内側に差し込む。スタン状態が続くがMP7を懸命に持ち上げようとする。

ーーだが。

死銃がマントから引き抜いた右手、そこに握られた黒い自動拳銃が視界に入った瞬間、全身が凍り付いた。

あの銃は......ペイルライダーを目の前で消滅させた黒い自動拳銃。

それでも撃たれる前に撃つまで。そう自分に言い聞かせ、再度右腕を動かそうとするが......

その、寸前。

銃の左側面に小さな刻印。

円の中に、星。
黒い星。
黒星(ヘイシン)。五四式。ーーあの銃。

(なん........で。なんで、いま。ここに、あの銃が)

力を失った右手から、最後の望みのSMGさえも滑り落ちる。

(あの男)


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