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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶 〜 オフレッサー 〜
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は信頼できる上官に出会う事が出来なかった。貴族達からもその血生臭さを疎まれ受け入れられる事は無かった。孤独だったはずだ、だからこそ装甲擲弾兵としての力量に、戦士としての誇りに拘った……。ただ生きて行くのなら不要なものだ、だが人として死んでいくには不可欠なものだったろう。
気が付けば宇宙艦隊司令部に来ていた。司令長官室は今日も喧騒に包まれている。昼休みの筈だがここは静寂とは無縁だ。執務机で決済をするヴァレンシュタインに近付くと彼が俺をチラッと見た、そしてまた決裁に戻る。
「相変わらず此処は賑やかですな」
「ええ、内乱の後始末も有りますが艦隊司令官達が治安維持のために出撃しています。色々と大変です」
大変です、と言いながらも声は明るい。戦争よりも国内の発展に力を尽くせることが嬉しいらしい。妙な男だ、軍人なのに。
「装甲擲弾兵はどうです、掌握出来ていますか?」
「徐々に努めてはおります」
「徐々にですか……。頼みますよ、総監。直ぐに戦争が始まる事は無いと思いますが油断はして欲しくありません。私はこの宇宙から戦争を無くしたいんです」
ヴァレンシュタインが俺を見た。笑みは浮かべているが目は笑っていない。
ヴァレンシュタインの推薦により逆亡命者である俺は装甲擲弾兵の総監に就任した。異例の事だ、帝国始まって以来の事だろう。彼は俺を信頼し、俺を評価し、俺の事を心配もしてくれる。ヴァンフリートで、イゼルローンで、そしてオフレッサーと戦ったレンテンベルクでその事は分かっている。俺は良い上司を持つ事が出来た。
「分かっております、小官も三十年後の宇宙を見てみたいと思っているのです。閣下との約束ですからな」
「そうですね」
ヴァレンシュタインが頷いた。
そう、俺には夢が有る。三十年後の宇宙をヴァレンシュタインと共に見るという夢が。俺だけでは無い、他にも同じ夢を見ている人間が大勢いる。だから俺は孤独ではない、老いて行く事を怖れる事も無い。俺は一人の人間として希望と夢を持ってこれからの人生を生きていけるだろう、三十年後の宇宙を見るために……。
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