第十五章
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二人のうち、一人は死んだ。不運にも、仲間の撃った弾でね。」
石原は、黙って聞いている。
「警察に知らせて、取り調べが終わったのが、11時頃だ。ようやく調書にサインして、帰してもらった。」
石原は目を閉じて、なお沈黙している。石原は、足を組みなおし、ビールを口に運んだ。頭の中を整理しているのか、目はつぶったままだ。飯島が続けた。
「あの日、石原さんと別れてから、立川の病院で佐久間に会った。本当に殺してやりたかった。あいつは、またしても俺に告白したんだ。和子を殺したってね。」
石原はちらりと飯島に視線を走らせた。憎悪を漲らせ口走った。
「殺してやる。絶対に殺してやる。」
「いいや、石原さん。それは止めておいたほうがいい。奴は殺されることを望んだ。奴は心底死にたがっていた。」
石原が頭を抱え込んでため息とも悲鳴ともつかぬ声を発した。飯島が続けた。
「それから、一昨日、南の女房と会った。ちょっと聞きたいことがあったからだ。どうやら、彼女と別れてから、誰かに後を付けられたようだ。その日の深夜に襲われたのだから。」
飯島は、あのボディーガードを思い浮かべていた。あの男は拳銃を胸に吊るしていた。ということは向田の仲間の可能性がある。あの夜、外にいたあの男は向田に連絡できたはずだ。向田敦のことがどうも気になる。
佐久間は死にたがっていた。和子を殺したのは自分だと言い切った。そして飯島の手には拳銃が握られていた。つまり、向田が、飯島に拳銃を渡す役割を担っていた可能性は否定できないのだ。石原が聞いた。
「南の女房に何を聞きたかったのです。」
「敵が、誰なのかを知りたかった。敵が分からなければ戦えない。それに佐久間を警察に訴えるように説得するつもりだった。」
「それで。」
「南の女房を襲ったのは、佐久間と竹内という男、そして和子を襲ったのは竹内と昨日ホテルで死んだヤクザだ。和子襲撃に佐久間が加わらなかったのは、和子が佐久間の顔を知っていたからだと思っていた。」
「違うのですか。」
飯島は、言葉を発しながら考える傾向がある。今、脳裏を掠めた考えは重大な鍵になる。飯島はその直感を信じた。そして考え込んだ。思考を巡らせていると、閃光が脳内にひらめいた。そして、ある結論を導き出した。
「ああ、違う。和子が襲われた時、佐久間は石原さん、あんたと会ってた。そうとしか思えない。」
「そんな馬鹿な。内海さんは立派な方だった。あれが佐久間のはずがない。」
「いや間違いない。石原さんは佐久間と会っていたんだ。ところで、事務所は盗聴されていたんでしょう。」
「ええ、警察が調べて、電話とコンセントから盗聴機を発見しています。だからこそ犯人達は和子がホテルに来ることを知っていた。そうじゃないんですか。」
「ああ、警察はそう判断するだろう。つまり、襲うのはホテ
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