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無明のささやき
第十四章
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かに、話を逸らせたのだ。次の言葉を待ったが、下を向いて何かを考えているようだった。飯島が話を促した。
「南に嫉妬されたなんて初耳だ。俺が本社に居たのは最初の10年だけで、後は名古屋支店と東京支店だ。本社の南とは関わりを持っていなかった。」
「南は、私と結婚以来いつでもトップだった。でもそれは私あってのトップだったのよ。でも飯島さんは、実力でトップを維持していた。南にはそれが許せなかった。あなたが、そう、邪魔だったの。でも、本当に邪魔な理由は会社以外に別にあったのよ。」
そう言うと、香織は煙草に火をつけて、飯島の目を覗き込んだ。そして言った。
「あの人は私と結婚した後も、章子と続いていた。でも章子が本当に好きだったのは飯島さん、あなただった。それこそ、南があなたを嫉妬していた本当の理由なのよ。何故私がこんなこと知っていると思う。」
香織はいたずらっぽく笑って続けた。
「私立探偵を使って南の電話に盗聴機を仕掛けさせたの。私に聞かれているとも知らず痴話喧嘩していた。南が電話で怒鳴った。もう、飯島のことなんて口にするなっ、ですって。笑っちゃうじゃない。」
笑顔を作ろうとするが、目は座ったままだ。
「私は、あの人にとって出世のための単なる道具でしかなかった。本当に愛していたのは、佐久間章子だったのよ。」
「南と章子は、ずっと続いていたわけか?」
「とんでもない。私が許すものですか。飯田組を使ったわ。章子の泥棒猫にも脅しを掛けた。南は私に逆らうことなんて出来ないのよ。絶対に。」
と言って、虚空を睨みつけたかと思うと、次ぎの瞬間、香織は泣き崩れた。この時、南の苦虫を噛み潰したような顔を思い浮かべた。あの顔の原因が目の前にいる。少しだけ南を哀れに思えた。
 先程から香織は、飯島の横に席を移していたのだが、泣き崩れた香織は飯島の股座に顔をうずめている。次第に、下半身がむくむくと起き出してくる。膝を動かして、それを隠そうとするのだが、香織がその動きに合わせて顔を移動する。
 しまいには、勃起したそのものを頬で愛撫していた。飯島はふーっとため息をつき、香織の肩を抱きながら言った。
「香織さん、俺の下半身は俺の意思を無視している。」
「あなたの意思って。」
「南と兄弟になるつもりはないってことだ。」
「でも、もったいないわ。こんなに硬くなっているのに。」
飯島は香織を抱き起こした。そして言った。
「香織さん、そろそろ終いにしよう。俺は佐久間に命を狙われている。その気にはなれない。息子は不肖の息子だ。俺の意思を無視しやがって。」
香織は、飯島の話を聞いていないのか、ねっとりとした妖艶な視線向けた。誘っているのは明らかだ。飯島はそれを無視して唐突に聞いた。
「最後に、もう一度、聞いておきたい。君と向田敦との関係は?」
「私、向田敦なんて名前、
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