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無明のささやき
第十二章
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いって訳だ。」
「ああ、拷問されても喋らん。」
「いいか、写真は和子も見ているんだ。」
「夫婦の趣味がエロ写真収集ってわけか。キモイ夫婦だぜ。夫婦揃ってエロ写真のモデルを佐久間と勘違いした。夫婦共々ノイローゼってわけか?警察がそんな話を信じると思うのか。俺たちが否定すれば、警察は動きようがない。」
「この野郎、言いたいこと言いやがって。そうか、まだ脅迫が続いているってことか。えっ、そうなんだろう。竹内にも脅されているんじゃないのか?」
「何を言っているのか分からんな。竹内だって、誰だそいつは。」
「とぼけるのもいい加減にしろ、この野郎。名古屋のクラブで竹内にお酌していたじゃないか、左手まで添えてな。どうなんだ、奥さんを襲ったのは佐久間と竹内じゃないのか?」
「知らんな、お酌していたって?誰かと見間違えたんじゃないのか。飯島はノイローゼだって噂だが、どうやら本物のようだ。」
むかっ腹が立った。
「お前がそこまで知らばっくれるなら、写真のネガのコピーを警察に提出するしかないな。お前の言うとおり、俺はあの種の写真の収集家なんだ。どうしても秘蔵して置きたかったんだ。」
「なにー。」
南が初めて気色ばんだ。飯島はほくそえみながら言った。
「そんな目ん玉ひん剥いて驚くんじゃねえよ。俺が用意周到でないことは、お前が一番よく知っているだろう。嘘だよ、嘘。まあ、喋れないのは、義理の親父の厳命なんだろうから、しかたないか。」
「おい、飯島、本当に、コピーを持ってないんだな。もし、持っていれば大変なことになるんだぞ。分かっているのか。」
「分かっているさ、会長の気性は十分にな。それに、どんな娘でも我が子は可愛い。」
南が叫んだ。
「貴様、どんな娘とはどういう意味だ、この野郎、言わせておけば、図に乗りやがって。会長に言ってやる、貴様がそう言ってたってな。」
苦笑いして飯島が言い返した。
「おいおい、子供の喧嘩じゃあるまいし、パパに言いつけてやる、だって。ふざけるな、この野郎。お前は忘れているんじゃないか。俺は既に辞表を出している。お前等一族なんて怖くはない。それにお前の女房の浮気性は会社でも有名だった。だからこそ、あんな目に遭ったんだ。」
こう言うと、飯島は、乱暴に受話器を置いた。
 飯島はわくわくするような興奮を覚えていた。悔しがり屋の南のことだ、地団太踏んで悔しがっているに違いない。間違い無く、飯島の言ったことを西野会長に報告するだろう。最悪の場合、南はネガのコピーの存在を匂わせ、会長をたきつける可能性もある。
 飯島が興奮しているのは、組織人としてそれまで抑圧していた感情を解き放ったからだ。いや、それだけではない。何もかも失った男の絶望が、全てを敵に回して闘争することを欲していたのだ。何かが飯島の心に芽生え始めていた。
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