自殺が罪になった日
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彼女たちは小林から渡された紙袋をこぞって食堂のゴミ箱に捨てにいった。
その袋の中にはお菓子の箱が入っていた。
その中にはお菓子と一〇〇万円札の束が入っていた。
その束は水野には三本。前野には二本。彼女も二本。他は一本だった。
その袋は彼女たちが食堂から出たあと。食堂の扉の窓からその様子を覗いていた水本が小林のご機嫌をとるためにそれをそこから拾い上げ小林に差し出した。
水本は入社二年目だが魂をもうそろそろ売るだろう。
そして二日後。この日二人が刑期を終える。
昼休憩時間。
彼女はその二人と刑務所では最後の井戸端会議を彼女の部屋で行った。
「宇美子出たらどうすんのよ?」
「仕事クビになったから。なんか探すわ」
現実は法律通りにはなってない。
「しずく は?」
「実は私黙ってたけど。ここ来る前ほんものの刑務所行ってたんだわ」
生命放棄阻止法には。
〈生命放棄の罪と その他犯罪で刑務所に入る場合はその他の犯罪で犯した罪を償ってから生命放棄阻止刑務所に入所する〉と定められている。
「えっ」
「ふたりには言いたかったんだ。私さあ。男に騙されて詐欺の手伝いさせられてたんだ。バカでしょ?」
「しずく はバカじゃないよ」
「そうだよ。ねえ。連絡先交換しない?」
笹川はこのままでは前野が暗い気持ちで出所することになると思い、話題を変えた。
「いいよ」
「私は務所暮らしが続いたから、解約したんだよね」
「じゃあ。契約したら教えてね」
「う ん」
こうして井戸端会議は終わった。
「二人とも準備できたの?」
支所長が二人を呼んだ。
二人はバックを手に持ち、その部屋を出た。そのあとを彼女がついていった。
彼女が出て行って誰もいない部屋――。
この日の岐路灯のカレンダー。
〈犯罪は刑法によって裁かれるという が俺はそう ではないと 思う 。刑期を終えた人を迎え入れる世間の見る 目や扱い方の方がよ っぽど ムゴい裁き方をする。これって間違ってないか? 一時間 う ん 百万もらってるキャスター様には言えないから 俺が 書いてみたよ 〉
そして翌日。
新入りが入って来た。
「ちぃーす。斉藤さ く ら です」
「斉藤さん。差し支えなかったらここに入って来た経緯を教えてく ださい」
「差し支えなければってなんですか?」
「そのことを言うのが辛く ないならという 意味ですよ」
司会の水本が説明した。
「ていう かいう やついんの? いたら ばか でしょ」
「そう ですかでは、次は北原さん」
彼女はイライラしながらもちゃんとその理由も話した。
その後、他の受刑者たちも斉藤にイライラしていたが彼女同様名前と ここに来た経緯などを話した。
そして、顔合わせが終わり。
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