自殺が罪になった日
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で腫れた彼女のたまぶたを指差した。
「ちょっと、ごみが」
「う そつけ」
「後で聞くから早く入りなさい。ほら、つなぎ脱いで洗っとくから」
笹川にせかされながらつなぎを脱いだ。
その後、なんとか食事の時間に間に合い、食事をした。
食事後、食堂で九人にせがまれ涙の真相を語った。
そして、この後、各々の恋バナを語り合い一同もりあがったが、高山だけはもの思いにふけた様子で元気がなかった。
彼女は連日、彼が来るのをまちこがれた。
一日二回。搾乳した貯蔵タンクの牛乳が集乳車のタンクにホースによって全て吸い上げられる間彼らは語り合った。彼の話題は小学校から今に至るまでの話中心。彼女の話題は上司や部下の愚痴、元彼の愚痴だった。
こうした彼女にとって幸せなひと時は一週間を経過した。
そして、この日の午後の搾乳作業を終えて、タンクに寄りかかりを作業手袋外した手を後ろに組んで、彼を待っていた。
しばらくして、その車と共に彼がやってきた。
彼女はタンクに寄りかかるのをやめ、その手を解いた。その手は真っ赤だった。
寒く て赤く なったわけじゃない。
「ときお。早く来い」と強く願い、その想いは握力となり手を強く 握り 彼女の両手を真っ赤にした。
彼は車から降りて、「先生」と彼女に手を振りホースの接続を始めた。
彼女はこの呼びかけに小さく 手を振った。
彼は車のタンクのホース接続を済ませ、彼女のいる貯蔵タンクの前にそのホースを持ってやって来た。
接続作業を開始する彼を見て彼女は作業の邪魔になるのではないかと思い。「よいしょ」と可愛い声を出し、自ら一歩後ろに下がった。
彼はその声につられて一瞬、彼女に目線を配り、すぐホースに戻した。
作業を見守っている彼女は早く会話したい気持を、手を後ろに組むことで抑えた。
彼は接続を終え。「ちょっと、待ってね」と言いその車のタンクの後ろについてる吸い上げ開始のスイッチを押しに行った。彼女はその言葉を受け軽く頭を下げた。
そして、彼が戻ってきた。
彼女はそれを見て手とその気持ちを開放した。
再び、その手は赤く なっていた。
「遅い」
「ごめん。先生」
「先生ってだれ?」
「なに? 北原さんの方がいいの?」
「まいがいい」
「まいって。ほんとにいいの?」
「うん。私はときおっていってるんだから」
「じゃあ。まい」
「あー。呼び捨てした」
「まいがしろっていったんだろ」
「顔あかいぞ」
「まいがからかうからだろ」
「ごめん。ゆるして」
「かわいいからゆるす」
「かわいいって。私みそじだよ」
「そんなのかんけえねえよ。あっ。まいもあかく なった」
「ときおがからかうから。照れちゃった」
「おれはからかってない」
「ねえ。
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