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自殺が罪になった日
自殺が罪になった日
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そっちにいかないでよ」
「ごめん」
「こっからは真面目に聞いてよね」
「うん」
「聴覚障害はただ単に耳が聞こえないっていうだけじゃなくて、雑音が混じって聞こえずらかったりする人もいるんだよ。だから補聴器をつけても聞き取れない音がでてくるんだよね。ここまでわかった?」
「うん」
「そこで、聞き取れなかった部分を手話で補うんだよ」
「そうなのか。手話は耳ってことか」
「そう。そう。耳なのよ。それをさあ。澤野君みたいにお笑いの道具みたいにして遊んでるのを見て甲斐堀さんはいい気持ちしないよね?」
「うん」
「だから。今度やったら。私澤野君の事絶対に許さないから」
「わかったよ。封印する」
「澤野君ってただのバカだと思ってたけど実は純粋でいい子なんだね。先生。好きだぞ。そういう男は」
 (回想終わり)
「あの時さあ。他のやつは悪いことは悪いことなのって一点張りでこっちも悪い事してる認識はあったんだけど。あれじゃあなんか反省する気にはなんなかった。でも、あの時の先生の叱り方はスーッと伝わってきたんだよな。だから、俺は人の気持ちを踏みつけることは絶対にしないと決めたんだ」
彼女にしてみれば、子供達に一体どういう叱り方をすれば自分のやった悪い事に気が付いてくれるんだろうと悩んでいた時期の叱り方が伝わっているとは思っていなかった。  
 目頭が熱くなっていた。
「先生泣いてる?」
「ちょっとね」
「先生。これ」
 澤野はジャンパーの右ポケットから自分の会社名が書かれているポケットティシューを取り出し彼女に差し出した。
「ありがとう」
 彼女はそれを手に取り、そのティシューの開け口を左手でパンチして開けて、おもむろにティシューを取り出した。
「早く ふいて。先生の涙は見てられないから」
「うん。ごめん」
 澤野は彼女が涙をふく 仕草に見惚れていた。
「俺もういかないと」
「そっか」  
 澤野はその彼女をもうしばらく 見ていたかったが集乳に追われている現実を無視する事ができなかったので彼女に別れを告げた。
彼女は車に歩み寄っていく澤野のうしろを追っていた。
「先生。じゃあ。明日も朝夕来るから」
「うん」
 澤野は車に乗り込みドアの隙間から彼女に声をかけ、彼女の返事を聞いたあと、ドアを閉め車を出発させた。
彼女はその車のあとを歩いて追っていった。車が敷地内に出ると、その車を追うことを止め、刑務所に戻った。
「まい。遅いぞ」
脱衣場に入って来た彼女を茶化す声が笹川中心にかかった。
「ごめん」
「遅れた事は許すけど。キスした事は許さないぞ」
笹川の冗談に大島たちが更に茶化す。
「やめてよ。そんな事してない」
「あれっ。まぶた腫れてない」
笹川が先ほどの涙が原因
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