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剣の丘に花は咲く 
第九章 双月の舞踏会
第二話 桃りんご狩り
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るりとルイズに背中を向け、

「先に帰るっ!」

 駆け出した。
 が、走り出した足は直ぐに止まることになった。
 原因は士郎の前に立ち塞がる。

「……何時の間に」

 ロングビルたちの姿。
 
「なにテファを置いて逃げようとしているんだい? 全く薄情な男だねぇ」
「桃りんご狩りねぇ……一体どんな桃りんごを採りに来たんだか?」
「大きな桃りんごを掴めて良かったですねシロウさんっ」
「っく……いや、その……だな」

 じりっと後ろに下がる士郎の背筋に、再度ゾクリと寒気が走る。
 ゆっくりと背後を振り返る士郎の目に、杖を突きつけるルイズの姿が。
 呪文は間もなく唱え終える。
 そう判断した士郎は咄嗟にルイズから距離を取ろうと被弾覚悟で立ち塞がるロングビルたちに向かって駆け出そうとしたが、

「ッッ!!?」

 その先に、

「ほう、自分から来るとは覚悟を決めましたか」

 デュランダルを鞘から引き抜いたセイバーの姿があった。
 このまま飛び出せば確実に斬られる。
 士郎は地を蹴ろうとした足を無理矢理押さえ込む。
 何とか飛び出すのは防げたが、ピンチなのは変わらない。
 前門の虎(セイバー)後門の狼(ルイズ)
 立ち止まった士郎がだらだらと脂汗が流れる顔で、迫る(セイバー)(ルイズ)を交互に見返す。
 士郎の脳裏にこれまでの人生が刹那の内に流れる。

 ―――人……それを走馬灯と呼ぶ。

 ここで一つ話をしよう。

 死の間際に見ると言われる走馬灯は、一説には迫る死の危険を回避するため、脳が過去に経験したことからその方法を探す際に流れるというものであるという。

 そして今、走馬灯が流れきった士郎の目に、迫る脅威(呪文を唱え終えたルイズと抜き身のデュランダルを手に迫るセイバー)の姿が映り。



「―――ふむ」 
 


 腕を組み、不敵な笑みを浮かべた士郎は小さく頷くと、晴れ渡る蒼い澄み渡った空を見上げふっと優しく微笑んだ。








  

 雲一つない青い空の下、ウエストウッドの森の中では様々な音が響いていた。



 風に揺れる枝葉の音色。



 心地よい小鳥たちの歌声。


 
 涼やかに流れる川の音。



 木々が微塵に砕ける音と魂消る悲鳴。



 ……今日もウエストウッドの森は賑やかであった。









 もうもうと立ち上る土煙の発生源に転がるそれは、何やらぴくぴくと動いていた。
 所々黒く焦げているそれには、何やら手足のようなものがついている。 
 どうやらそれは、人間のようだ。
 白い髪を泥と焦げで斑に染めたそれは、仰向
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