第九章 双月の舞踏会
第二話 桃りんご狩り
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んごを掴み取った。
苦労の末桃りんごを手にしたティファニアの顔に喜色が浮かんだが、それは着地に失敗したことで驚きに変わる。
着地に失敗し、ゆっくりと地面に向かって倒れ込み始めるティファニアに向かって近づく士郎。
士郎とティファニアの距離は微妙に遠く。士郎の足であっても間に合うかどうかはギリギリの距離であった。
ティファニアを支えようと伸ばされる士郎の両腕。
「あ、れ?」
「……あ……やば」
地面に転がる硬い感触を覚悟し目を閉じたティファニアだったが、何時まで経っても訪れない硬く冷たい感触に戸惑いながらも、代わりに胸に感じる何やら力強い感触を確かめるためゆっくりと瞼を開くと。
「あ〜……その」
「え? あ……あえ?」
そこには必死に伸ばされた士郎の両腕が、まるで図ったかのようにティファニアの巨大な桃りんごをしっかりと掴んでいる姿が。
自分の胸を掴む腕に沿って顔を上げたティファニアの目と、誤魔化すように苦笑いを浮かべる士郎の目が重なり。
「今日一番の大物だ……な?」
「ははっ」と爽やかに笑いコテリと小首を傾げる士郎。
「っき―――」
大きく口を開いたティファニアの顔がタコのように一瞬で赤く染まり、
「……きゅう」
瞳の焦点が揺れたかと思うと、ガクリと膝を崩し士郎に向かって倒れ込んだ。
「お、おいっ」
「……ひ……あう」
手に感じる重みが増えたことで、ティファニアが気絶したことに気付いた士郎は、胸を掴んでいた手を離すと倒れかかってきた身体を抱きとめた。
「お、おい大丈夫か? しっかりしろ、大丈夫だ傷は浅いぞっ!?」
突然のことで混乱する士郎が意味不明な事を抱きとめたティファニアに向け訴えていたが、
―――エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ―――
「っ!!?」
背筋が粟立つ感覚に恐る恐ると振り返ると、そこに……
「る、いず?」
修羅がいた。
―――オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド―――
律儀に桃りんごが入った籠を地面に置いて身軽になった身体で、ルイズは杖を空に掲げて何やら呪文を唱えている。
釣り上がった血走った瞳と血のように濡れた紅に染まった口内。
その顔はまさに修羅。
―――べオーズス・ユル・スヴュルエル・カノ・オシェラ―――
長々と呪文を詠唱しながら、ゆらゆらと身体を揺らし迫るルイズ。
『虚無』の威力は詠唱の時間に比例すると言うが、それなら先程から延々と呪文を唱えているルイズがこれから放つだろう魔法の威力の強さは……。
士郎はふっと悟りを開いた高僧のような笑みを浮かべると、気絶したティファニアをそっと地面に寝かせく
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