第九章 双月の舞踏会
第二話 桃りんご狩り
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はあるだろう桃りんごの姿に、背中に背負った籠の肩掛けがズルリと滑る。ここまで歩いてきた疲労からくるものではない汗を額に滲ませたルイズが、恐る恐るとティファニアに顔を向ける。
「勿論よっ! そうじゃないと食料の備蓄がもう足りないんですっ! まだ小さかったり青かったり、逆に熟れ過ぎだったりするのはそのままにしておくけど、基本全部採るつもりです。桃りんごはちゃんと手を加えれば日持ちするんですよ。マチルダ姉さんが生活費をくれましたから、次に商人さんが来るまで何とか持つと……多分……きっと……出来れば……あれ? 無理かな?」
頭に被った大きな帽子ごと頭を抱えたティファニアが、段々と小さくなっていく姿を見た士郎は土下座をする勢いで頭を下げた。
「セイバーが迷惑を掛けて本当に済まない」
「え、あ、そ、そんなっ! 気にしなくていいですよ! 色々とアルトには助けてもらっていますし……仕事の量と食べる量の釣り合いが取れてない気がしますけど……」
最後のぼそりと小さな声で呟いた言葉が耳に入った士郎は、下げた頭をますます下げると、膝を曲げて額を地に付けて土下座をする。
「本っ当にすまないっ!」
「そ、そんなっ止めて下さいっ! 大丈夫ですから! 分かってますから、アルトに悪気があるわけじゃないってことぐらい……でも、それだから注意もしにくくて……」
「ははは……」と肩を落としながら笑うティファニアの姿に、ルイズが桃りんごよりも柔らかそうな自分の頬に指を当てると首を傾げてみせる。
「アルトの食べる量が多いっていうなら、出す料理の量を少なくしたらいいじゃない」
何でそんなに悩んでるのよと気楽な様子でルイズが話しかけると、ティファニアはゆっくりと幽鬼のように顔を上げ首を左右に振った。
「……それが出来ないの……」
「で、出来ない?」
震える声で泣き出す直前の濡れたような声を漏らすティファニア。
予想外の反応に反射的に問うルイズに対し、
「怖いの……」
「怖い?」
これもまた、予想外の答えが返ってきた。
首を傾げるルイズに対し、怪談を話すようにティファニアはぽつりぽつりと語りだす。
「そう、怖いのよ……お腹が空かせたアルトは……。実はね、シロウさんたちが来る少し前に、同じように食料の備蓄が底を尽きかけたことがあったのよ。……あの時のアルトはずっとピリピリしてて、とっても怖くて……でも……だからって、まさかあんなことになるなんて……」
思い出したくないとでも言うように、顔を両手で覆うティファニア。その身体は恐怖からか、微かに震えている。
恐怖に身を震わせているティファニアの姿を見るルイズの喉がゴクリと鳴り、恐怖が伝染したかのように背筋に悪寒が走った。
「あ、あんなこと
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