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剣の丘に花は咲く 
第九章 双月の舞踏会
第二話 桃りんご狩り
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 月が未だ空に浮かぶ、夜が明けきらない森の中、朝靄で白く煙る森を駆ける二つの影があった。
 四足で駆ける獣でも出せない速度で走るその影は、遮るものがない空を翔ける鳥のように森を駆け抜けている。
 まるで生い茂る木々がないかのように、走る速度を落とすどころか、更に上げる二つの影。
 影―――その正体は士郎とセイバーが走る姿であった。
 まるで森の中を駆ける士郎とセイバーが、青と赤の線を描いていく。
 森の中を漂う朝霧を切り裂くように走る士郎たちは、森の中ぽっかりと広場のように開けた場所に出ると下生えを抉りながら立ち止まった。
 前を走っていた士郎は、背後に立つセイバーに向かって漂う朝霧を纏うようにゆっくりと振り返る。
 士郎の前に立つセイバーの右手には、既に抜き放っていたデュランダルが朝露に濡れていた。
 互いに向かい合う士郎とセイバー。
 互いに手に持った剣を構え、二人は十メートルの間合いを挟み睨み合う。
 
 士郎が握るは白と黒の夫婦剣―――干将莫耶。

 セイバーが構えるは十字架に似た長剣―――デュランダル(絶世の名剣)

「―――さて、やるとするか」
「ええ、全力(・・)でお願いします」

 示し合わせたかのように、同時に腰を落とす士郎とセイバー。
 互いの身体が深く沈み、地を踏む足が下生えを深く沈める。

「負けても言い訳はなしだぞ」
「それはこちらのセリフです」

 互いの顔に不敵な笑みを浮かべ。

 大地を蹴る。

 爆発音と共に抉れた下生えが空高く舞い上がり。

 白く煙る森の中。
 
 青と赤の光が駆け。



 ―――オオオオオオォォォォァアァアッ!!―――

 ―――ッッアアアアァァッ!!―――



 森の中に破壊音が響き渡った。










 ……尋問会へと様変わりした朝食会は、目を覚ました子供たちの教育上にすこぶる悪いということで中途半端なところで中止となった。その後も事あるごとにルイズたちからセイバーやティファニアとの関係を問い詰められる士郎だったが、その度に半死半生になりながらも切り抜けていく。何度となく行われる命懸けの交渉劇。日が落ちる頃には、何とか完全な納得はしてもらえなかったが、士郎の説得? が通じたのか、拷問混じりの尋問はされなくなった。
 だが、だからと言って士郎の受難が終わったという理由ではなかった。落ち着きを取り戻した(ように見えた)ルイズたちが次に行動に移したのは学園への帰還であった。学園に帰ること自体は、元々士郎も戻るつもりであり、特に反対という訳ではないが。
 問題は時間であった。
 家の外はずいぶん前に日が落ちきり、今や空には煌々と輝く双つの月の姿。
 流石に夜も遅いということで、
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