第6話「試験―@」
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ぶにふさわしいモノだった。前後に左右、果ては上下と、全方位に収められた本。
「……すごいな」
つい一冊を手にとってしまう。途端に発動する罠。真後ろから放たれた矢はタケルの頭に見事にぶち当たり砕け散った。
ガンツスーツのおかげでダメージはないが、衝撃はうける。
「?」
ただ本人は気のせいだと判断したらしい。首をかしげて、ただそれだけ。救われたことにも気付いていないタケルは本を戻して頬をはたく。
「よし、行くか」
既に彼女達の通ったルートも、そのルートに存在していた罠も知っている。ほうっておけばすぐに迷子になる彼だがルートを知ってさえいればそういう心配もない。
――行方不明になった地点まで、一気に追いつく!
「ふっ」
床を踏み抜かないように力配分に気を配って走りだす。
十数分でたどりついた場所には誰もいなかった。代わりに一体の巨大な石像が落ち込むような姿勢で穴を覗き込んでいる。丁度タケルに背を向ける格好でいるため彼の存在には気付いていないようだ。
「しもうた、こりゃやりすぎたの」
と石像から漏れ出た声は、どこか違和感を覚えさせるが、確かにタケルの耳に聞き覚えのあるものだ。
「……学園長?」
首をかしげ、呟いた声に巨大な石像はビクとその動きを震わせ、一旦停止。ゆっくりとタケルへその巨体を向けた。
「タケ……ごほごほっ。むむ、またもや侵入者か!?」
「今、タケルっていいかけ――?」
「――問答無用じゃあああ!」
石像がその巨体と同等な大きさのハンマー振る回し、床を穿つ。タケルはそれを当然のように避けていた。後ろに飛び退き、武器を取り出そうとした彼を突然の浮遊感が襲った。
「……まさか」
嫌な汗が頬を伝う。ゆっくりと足元に視線を送り、彼の予感は的中した。
底の見えないほどに深く、暗い。そんな大穴が、彼を飲み込もうと口を広げて待ち構えていた。
そして
「何〜〜〜!!」
重力を思い出したかのように、彼は落下した。
気付けば着水していた。
あまりの高さから落ちてきたため、大きな水しぶきが上がる。水の深さは相当なものだが、単なる水ではないようだ。異常なほどに浮力が強く、服と装備を着込んでいるタケルですらすぐに浮き上がった。
あまりの高さに、落ちている途中、不幸な結果をも覚悟していた彼だが、そういった結果になることはなさそうだった。
すぐに辿り着いた岸で、一旦周囲を見渡す。
異様に洞窟の高い天井。壁が光を発し、至る所に本棚が並び立っていた。よく見れば建築物すら点在しているようだ。
「これは……また」
――すごいな。
掠れた声で呟く。暫し
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