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悪夢
悪夢 第一夜

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曇天だった。
昼なのか夕暮れなのか判然としない。なぜ、私はこの道を進むのかも定かではない。
うねる山道を慎重なハンドルさばきでアップダウンを繰り返しているだけだった。私はどこへ向かうのだろう。

標高はそれほど高くないらしく道路の左右は樹林帯となっている。もっとも黒々とした壁にしかみえないのだが。

「暗いな。夜になる前に戻らないと」

独り言で不安を払拭、なすべきことを自分に納得させようとした。
不安はこの粘り着くような曇天のように心から離れなかった。

いくら走っても道路は上下へ、左右へうねるばかりでもはや方向感覚もなく、どこへ向かうのかも分からなくなっていた。

ふと後方をみると、ちらりと後続車が見えた。
何とも言えぬ安心感が腹に満ちてくる。この先に人里がある。この当たり前の感覚を取り戻すことができた。

後続車はなおもスピードを上げ、直ぐ後ろに迫ってきた。

「!!」

霊柩車だった。

「おいおい、気味悪いな。我ながら不謹慎だけど」
聞く人もいないのに独語してしまう。

いつまで走っても人里にでることができず、霊柩車はぴったりとついてくる。偶然であろう、あちらも用事があってのことだろう、と自分を言い聞かせるが、何とも気味が悪い。

スピードを上げると、後続車もついてくる。スピードを落とすと、すっとスピードをおとしてついてくる。車間距離をとってほしい。

もうたそがれ時になったようだ。道を譲るとしよう。こちらは慣れていないのだ。

自動車の待避所を見つけてハザードランプを付けて停車した。

しかし、霊柩車も私のすぐ後ろ、それも50センチも離れていないところに停まったのだ。

それからのことはよく覚えていない。


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