第一章 土くれのフーケ
第十一話 エミヤシロウという男
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翌朝……。
トリステイン魔法学院では、昨夜からの蜂の巣をつついた騒ぎが続いていた。
何せ、秘宝の「破壊の杖」が盗まれたのだ。
それも、巨大なゴーレムが壁を破壊するといった大胆な方法で。
今、宝物庫の前には、学園の教師が集まり、壁に空いた大きな穴を見て口をあんぐりと開けて立ち尽くしていた。
彼らの視線の先にある壁には、『土くれ』のフーケの犯行声明が刻まれている。
『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
それを見た教師たちは、オスマン氏が来る前に責任の所在を明らかにするため、昨晩の当直であるミセス・シュヴルーズを問い詰め始めた。
「ミセス・シュヴルーズ! 昨晩の当直は確かあなただったはずっ! それがこんな事になるとは、まさか、当直をサボっていた訳ではないでしょうね!」
殺気立った教師たちに詰め寄られたミセス・シュヴルーズは震え上がった。
なにせまさか魔法学院を襲う盗賊がいるなどとは夢にも思わなかったため、昨晩の当直はサボって、自室で寝ていたのだ。
言い訳できようはずもなく、一体これからどうなるのか不安に襲われたミセス・シュヴルーズはボロボロと泣き出してしまう。
「も、申し訳ありません」
「泣いたって、お宝は戻っては来ないのですぞ! それともあなた、“破戒の杖”の弁償ができるのですかな!」
「わたくし、家を建てたばかりで……」
ミセス・シュヴルーズは、よよよと床に崩れ落ちた。弱った獲物に止めを刺さんとばかりに、周囲を取り囲む教師たちがにじり寄ろうとしたその時、オスマン氏が姿を現した。
「これこれ。女性を苛めるものではない」
ミセス・シュヴルーズを問い詰めていた教師が、振り返ってオスマン氏に訴える。
「しかしですな! オールド・オスマン! ミセス・シュヴルーズは当直なのに、自室で寝ていたのですぞ! 責任は彼女にあります!」
オスマン氏は長い口ひげをしごきながら、口から唾を飛ばして興奮するその教師を見つめた。
「フゥ、いいかねミスタ……キョニュー?」
「誰が巨乳ですか!」
「いや、すまんすまん、ミスタ……ビニュー?」
「一言も合ってねぇっ!」
「ふむ、では。貧乳だったかの?」
「明らかに違うだろっ! 何ですか!? いくらなんでもあり得ねぇだろっ! わ・た・し・は、ギトーです!」
「すまん、かみまじた」
「あり得ねぇだろオぉぉがっ! そんな噛み間違いっ!」
頭を抱え唸りながら身を捩るギトーを横目に、オスマン氏は教師陣を見渡した。
「皆に聞くが、この中に、まともに当直をしたことのある教師は何人おられるのかな?」
なっ、流しやがったこいつ―――ッ?!
唸りながら身を捩っているギトーを華麗にスルーしながらオ
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