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剣の丘に花は咲く 
第一章 土くれのフーケ
第十一話 エミヤシロウという男
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向かうのじゃ。魔法は目的地につくまで温存したまえ。ミス・ロングビル!」
「はい。オールド・オスマン」
「彼女たちを手伝ってくれ」

 ミス・ロングビルは頭を下げた。

「もとよりそのつもりですわ」

 オスマン氏は、ロングビルと共に、馬車に向かう三人の後をついていく士郎に歩み寄り、小声で囁いた。

「ミス・ロングビルの事、頼みますぞ……」
 
 どこか悲しげに、そう呟くオスマン氏に、士郎は微かに笑いながら答えた。

「ああ、任された」





 四人はロングビルを案内役に、屋根なしの荷車のような馬車に乗って、のどかな田舎道を進んでいた。
 御者は士郎がやろうとしたが、ロングビルがそれを断って御者をしている。
 キュルケが黙々と手綱を握るロングビルの背中に話しかけた。

「ミス・ロングビルは手綱の扱いが上手なんですわね」
「ええ、オールド・オスマンの秘書をする前は色々とやっておりましたから」

 その言葉を聞くと、キュルケは疑問の声を上げた。

「えっ? だって、貴方、貴族なんでしょう?」
 
 それにロングビルはにっこりと笑って言った。

「わたくしは貴族の名をなくした者ですから」
 
 それを聞きキュルケはきょとんとした。

「あれ? でも貴方はオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」
「ええ、でも、オールド・オスマンは貴族や平民だということにあまり拘らないお方ですから」
「もし、差し支えなければ、事情をお聞かせ願いたいわ」

 ロングビルはそれに優しい微笑みを浮かべた。それは言いたくないのだろう。
 
「いいじゃないの。教えてくださいな」

 キュルケは興味津々といった顔で、御者台に座ったロングビルににじり寄ったが、ロングビルの隣に座っていた士郎にその頭を押さえられた。

「やめとけ。人の過去を根堀り葉掘り聞くのはな」

 キュルケは一瞬不満そうな顔をしたが、次の瞬間には何を思いつたのか、意地の悪い顔をした。
 その顔を見た士郎は、殆んど条件反射的に嫌な予感を感じた。

「なら、代わりにシロウの過去を聞きたいわね。前から興味があったのよ。ルイズに呼ばれる前の貴方が何をしていたかが」

 キュルケの要求に、士郎は困惑の表情を浮かべる。

「俺の過去など、聞いてて面白いものでもなんでもないぞ」

 苦い顔で言う士郎に、キュルケは普段見せない優しい顔で笑いかけた。

「好きな人の話なら、つまらない話なんてないわよ」

 士郎はため息を吐き、周囲に助けを求めたが、ルイズは興味ありませんっといった顔をしながらも、その目を好奇心に輝かせて耳をそばだてていた。タバサは本から顔を上げずにいるが、その耳をそばだてていた。ロングビルは、矛先が変わったこ
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