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剣の丘に花は咲く 
第一章 土くれのフーケ
第十一話 エミヤシロウという男
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に頷いたのを確認し口を開く。

「そうか。では、頼むとしようかの」
「なっ! オールド・オスマン! わたしは反対です! 生徒たちをそんな危険にさらすわけには―――」
「では、君が行くかね? ミセス・シュヴルーズ」
「い、いえ……、わたしは体調がすぐれませんので……」
「彼女たちは、フーケを見ているしの。それに、戦力なら十分じゃ。なにせミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いておるしの」

 オスマン氏の言葉に、どよめきと共に教師たちの視線が一斉にタバサに向けられる。同時に十数人の視線を受けながらも、タバサは返事もせずに、ボケっとした様子で突っ立っていた。

「本当なの? タバサ」

 オスマン氏の言葉に、教師たちだけでなく、キュルケも驚いていた。
 王室から与えられる爵位としては、最下級の『シュヴァリエ』の称号であるが、タバサの年でそれを与えられるというのが驚きである。領地を買えば手に入る男爵や子爵の爵位とは違い、純粋に業績に対して与えられる爵位……実力の称号なのだ。
 宝物庫の中がざわめく中、オスマン氏はキュルケを見つめた。

「それにミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身の炎の魔法もかなり強力と聞いているしの?」

 オスマン氏の紹介に、キュルケは得意げに髪をかきあげた。
 キュルケの次は自分の番だと、ルイズが自分の可愛らしい胸を張ったみせる。得意げに背を伸ばすルイズの姿に、オスマン氏は困ったような顔をした後士郎を見た。
 そして、こほん、と一つ咳をする。

「ふむ、ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、しかもその使い魔は―――」
 
 そこまで言うと、オスマン氏は意地の悪い顔をして、士郎を見て続きを言った。

「―――平民ながらあのグラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったなど。その実力は確かなもの」
 
 オスマン氏の言葉に、士郎は苦笑いをしながら肩をすくめた。
 そして、教師たちがすっかり黙ってしまった中、オスマン氏は威厳のある声で言った。
 
「この者たちに勝てるという者がいるのなら、前に一歩出たまえ!」

 誰も微動だにしないのを確認したオスマン氏は、士郎を含む四人に向き直った。

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する!」
  
 ルイズとキュルケは競い合うように勢いよく、タバサはいつもどうりに冷静に、『杖にかけて!』と唱和した。そして、スカートの裾をつまみ、恭しく礼をした。
 それを見た士郎は、眩しげにその光景を見た後、鋭く光らせた眼で、同じように眩しげにその光景を見ているロングビルを一瞥した。

「それでは馬車を用意しよう。それで
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