第一章 土くれのフーケ
第十一話 エミヤシロウという男
[3/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
見えませんで」
コルベールの応えを聞き、オスマン氏は眉根を寄せた。
「そうか……変えることは、できなんじゃったか……」
「どうしましたか? オールド・オスマン?」
急に気落ちした様になったオスマン氏に不思議そうに尋ねると、オスマン氏は軽く顔を振り何時も通りの様子を見せる。
「いや……なんでもない。それより、ミス・ロングビルはこの非常時にどこに行ったのじゃろうかの?」
「ええ、確かに。何時もなら真っ先に来ている筈なんですが」
二人して腕を組みロングビルの所在について考えていると、噂をすれば影との言葉通り、ミス・ロングビルが現われた。
「ミス・ロングビル! どこに行っていたんですか? 大変なんですよ! 事件です!」
息せき切って現れたロングビルに向かって、興奮した調子のコルベールがまくし立てる。しかし、ミス・ロングビルは胸に手を当て呼吸を落ち着かせると、落ち着き払った態度でオスマン氏に告げた。
―――目の前のコルベールを無視して。
「申し訳ありません。朝から急いで調査をしておりましたので」
「調査?」
「そうですわ。今朝起きたら大騒ぎじゃありませんか。聞けば、宝物庫から“破壊の杖”が盗まれたと。壁にフーケのサインがありましたので、これは今、国中の貴族を震え上がらせている大怪盗の仕業だと直ぐにわかりましたので、すぐに調査を行っておりました」
丁寧に今まで何をしていたか説明をするロングビル。その時、話を聞くオスマン氏とルイズたちの背後に控えていた士郎の鋭い視線がロングビルに向けられる。
「ふむ、何時もながら仕事が早いの。ミス・ロングビル」
一人無視される形になっていたコルベールが、気を取り直した風に慌てた調子で調査結果について問いただす。
「それで? 結果はどうでした? 何かわかりましたか?」
「はい。フーケの居所がわかりました」
「な、なんですと?」
コルベールが、素っ頓狂な声をあげた。
「どうしてわかったのじゃ?」
「はい。近所の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。おそらく、そのローブを被った男がフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」
それを聞いたルイズが叫んだ。
「黒ずくめのローブ? それはフーケです! 間違いありません!」
オスマン氏は視線を下に向けると、数瞬考え込んだ様子を見せた後、ミス・ロングビルに尋ねた。
「ふむ……それで、そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日。馬で四時間といったところでしょうか」
それを聞いたオスマン氏と士郎は、同時に微かにため息を吐いた。
一気に事件解決の糸口が見えたことに、コルベールは興奮した様子
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ