崑崙の章
第5話 「黄忠さん、お願いがあります」
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しね……まあ、この後の予想も大体つくけど。
「だが、三日後の夜では劉表殿との連絡はつくまい。わしの一存でやったと報告せい。全ての責任はわしがとる!」
厳顔さんが自信満々にそう言う。
思ったとおりの展開だった。
あまりに思った通りなので溜息を吐きつつ、ちらっと黄忠さんを見る。
黄忠さんは苦笑しながら目で謝っている。
「そ、そうはもうしましても……」
「ええい! いいから身代金を用意せんか! 見せ金とはいえ、本物でなければ太守が危険じゃろうが!」
「は、はいぃっ!」
厳顔さんの鬼の一喝に、ばたばたと駆け出す文官。
あーあ……この人、思った以上にめちゃくちゃだったわ。
「ふん……所詮は小役人よ!」
「そんなことを言ってはダメよ、桔梗。彼にだって立場があるんだから」
「だが情けないことには変わりない。わしならば……」
「はあ……」
思わず大きく出る溜息。
厳顔さんがムッとした顔で、こちらを見てくる。
「何じゃ小僧、何か言いたいことでもあるのか?」
「言いたいこと……言いたいことですか?」
俺は呆れ顔で厳顔さんを見て、黄忠さんにも目線を合わせる。
黄忠さんは、苦笑しながら頷いている。
言っていいのね? 言っちゃうよ?
「では言いますけど……身代金もって一人で取引場所に向かう。策はありますか?」
「策じゃと? 江賊なんぞ蹴散らせばよかろう」
おいおい……脳筋にもほどがあるだろ。
「それでまた全身傷だらけになるんですか……? 今度は死ぬかもしれませんよ?」
「ぐっ……あ、あれは油断していたからじゃ! 今度は油断などせん!」
「相手はどれだけいるかわからない江賊ですよ? たとえば三千の江賊に周囲を囲まれたらどうするんです?」
「そ、そんな人数が乗る船などありはせん! せいぜい一隻百ぐらいとして、十隻で千人……」
「で、一人で倒すと?」
「………………」
おい、黙るなよ。
ちょっと考えなしが過ぎるから、こっちは少々いらついてるんだから。
「し、紫苑。何か策はあるかのう?」
「桔梗……貴方、最近猪突猛進が過ぎるわよ? 仮にも太守なのだから、もう少し命は大事にしてちょうだい」
「……すまぬ」
黄忠さんにまで窘められて、意気消沈した様子で座る厳顔さん。
やれやれ……
「少し整理しましょうか……まずは、江賊はここの太守を人質にとり、二千万もの大金を要求している。その運び手として、本来関わりのない厳顔さんが何故か指名されている。おまけに取引の時間は三日後の夜と時間もない……ここまではいいですか?」
「……うむ」
「わからないのは、なぜ厳顔さんがその運び役に選ばれているのか。江賊は厳顔さんが劉表……様の臣ではないこ
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