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無明のささやき
第三章
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にも出さない。
「よかったじゃないか、谷田だったら一流だ。さすがに箕輪だ。そんな所からオファーがくるなんて。」
「ああ、そこの仙台支店長が昔いろいろ世話になった人なんだ。その仙台支店の営業部長だ。ここの会社の地位よりワンランク落ちるがしかたがない。女房も喜んでいる。」
「本当におめでとう。お前ならやれる。本当に良かった。」
「有難う、話が急で、今月中に仙台に移らなければならない。落ち着いたら連絡する。それから、お前には本当に感謝している。前の会社はずっと前に潰れて、あそこにいたら大変だった。兎に角、頑張れ、お前ならきっと乗り切れる。」
「ああ、俺は大丈夫だ。俺は俺で何とかする。」
大きな手が差し出され、飯島のその手を力強く握った。
箕輪は飯島が彼の就職を心から喜んでいると思っている。飯島が嫉妬や羨望とは無縁な男だと信じている。飯島は箕輪の信じる飯島を演じきった。
 飯島は箕輪が思うほど強い人間ではない。二人は佐久間の派閥で出世した仲だ。その一人が落ちこぼれたとはいえ、それでも心は繋がっていた。同じ会社にいたからだ。しかし、今その一人が会社を去ろうとしている。どう頑張ればいいのだ。飯島の心の叫びは誰にも届かない。飯島は孤独の淵に、ひとりぽつんと立つ尽くすしかなかった。
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