暁 〜小説投稿サイト〜
季節の変わり目
和谷とヒカル

[8]前話 [2]次話
 
 「え、ネット碁?お前まだやってたんだ」

「ああ、そんでそいつまだ院生レベルだけど、どんどん強くなってきてるんだ」

「へえ、じゃあ院生じゃねえの?」

「そうかもなあ、ま、今度会う約束したし、その時分かるさ」

手合いの昼休みの間を縫って、進藤ヒカルと和谷義高は、近くのラーメン屋のカウンター席に腰を下ろしていた。ヒカルの強引な誘いの甲斐あってなのか、カツ丼派の和谷はついに折れてしまった。今回合わせて、これで連続3回もヒカルの主張を受け入れた気がする。溜め息でもつきたいもんだ。

「はあ!?お前、誰なのかも知らねえネットの相手と会うってのかよ!」

店内は中年の会社員や家族連れで賑わっていて、ヒカルのその声はそんなに響かなかった。

「なんだよ、悪いかよ。それに相手は高校生だし、大丈夫だってば」

ラーメンから口を離して、和谷に噛みつくヒカル。

「おまっ、最近は年齢詐称とかあんだからな」

「お前がそんなに用心深いって意外だな」

和谷はヒカルならそんなことは気にもせず、ラーメンを頬張り続けるかと思っていたのだ。

「常識。そんなんじゃいつか騙されるぞ」

氷だけになったグラスに水を汲んで、そのまま一気にヒカルは飲み干した。そんなヒカルを見て、和谷はふと思いつく。

「じゃあさ、進藤も来ればいいじゃん。それなら安心だろ?」

「はあ?」

冗談だろ、そう思った。こいつはいつも突拍子がない。俺を見る目は何か自信に満ち溢れている。断ろうと思った手前、こう言われた。

「おれ、カツ丼が食べたかったんだよな」

「・・・」










[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ