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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第十話 夜間飛行@
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の中に、聞き覚えのある単語が聞こえてきた。――間違いない、これは扶桑語だ。

(これって……)

『みなさんこんばんは。ラジオ東京です。今宵はいかがお過ごしでしょうか? 今夜も午前零時までの30分を――』

(扶桑だ! 扶桑の電波がロマーニャまで!!)

 信じられないといった表情で和音はサーニャを見やる。
 今はまだ1940年代である。通信技術も和音の時代に比べればまだまだ未熟だ。だというのに、遥か東の果てから確かに電波が届いている。人の息遣いがそこにある。
 そのことに、和音は深く感動した。

「夜を飛ぶナイトウィッチの間で流行っているの。扶桑からの電波だって届くのよ」
「そうなんですか……」

 いま、世界中の人々がこのラジオを聴いているのだろう。和音たちのすぐ下で、この空の下で生きている人々が、確かにそこに居るのだ。和音はラジオによって世界とつながったように感じ、はじめてそれを守るウィッチの使命の重さを実感した。

「これが、私たちの護ろうとしている人たちの息遣いなんだ……」

 和音にも、和音の使命があった。すなわち、扶桑の空を守る事だ。
 しかし、今の和音にはそれを果たす事ができない。

(でも、いつかはきっと……!!)

「沖田さん? どうしたの?」
「なんダ、腹でも痛くなったのカ?」

 和音はサーニャとエイラに声を掛けられてハッとする。
 軽く頬を叩いて気合を入れ直し、しっかりを前を見つめる。そうだ、今はとにかく目の前の事に集中しなければ……





 飛行開始からおおよそ一時間がたった。
 長時間の飛行を前提とした夜間哨戒では、一般的に航続距離の長いユニットが使用される。それでもなお足りない場合、ユニットに増槽を装備することになる。和音の紫電改も例に漏れず、ユニットの側面に涙滴型の増槽が装備され、航続距離を伸ばしている。

「夜の空は静かですね」
「うん。魔道神にも反応はないし、最近は静かね」
「まー油断してちゃダメなんだけどナ」

 三人はラジオに耳を傾けつつ、雑談に花を咲かせながら星空の下を飛んでいた。
 厳しい任務ではあるが、敵がいない限りは穏やかなものだ。
 しかし、その雰囲気が一変する。

「――っ!! 北東の方向、距離2000……中型のネウロイが一機……」
「どっちに向かってるんダ?」
「まっすぐこっちに向かってくるわ。みんな気をつけて!」

 サーニャの魔導針が敵性反応を捉える。距離2000。足の速いネウロイなら一足飛びに間合い詰めてこられる距離だ。和音は肩に背負った20mm機関銃を持ち直し、安全装置を解除し初弾の装填を確認する。
 同時に、意識を集中して視覚を見る≠ゥら視る≠ノ切り替える。目に見えないもう一つの瞼を開け
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