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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第十話 夜間飛行@
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れたのだろう。

「ごめんなさい、沖田さん。辛い事だったら、話さなくていいから……」
「いえ、そんなことはないですよ、サーニャさん」
「そうなの?」

 申し訳なさそうに言うサーニャに、和音は苦笑しながら応じてみせる。
 思えば、異世界と言っても過言ではない過去の時代へとやって来てしまった和音だが、不思議と辛いとか苦しいとか感じたことはなかったのだ。

「エイラさんの言っていることは本当です。私は、今から50年後の扶桑で生まれましたから」

 銀色の絨毯の上を滑るように飛びながら、和音はエイラとサーニャに対して語り掛ける。

「50年後かぁ……わたしもサーニャもきっとお婆ちゃんだよナ」
「その頃のわたし達ってどうなってるんだろうね」

 ようやく和音の飛行が安定してくる。緊張がほぐれたせいだろうか?
 サーニャの魔導針にも反応はなく、哨戒は順調だといえそうだった。

「なあなあ、50年後のわたし達ってどうなってるんダ?」
「気になりますか?」
「当たり前だロ!! ちょっとでいいから教えてくれヨ〜」
「エイラ、そういう事言わないの」
「え〜……」

 こんなやり取りを以前もしたなぁ、と思い返しながら、和音はしばし黙考する。
 あまり未来の事を伝えてしまうのはよくないのかもしれないが、逆に伝えることによって明日を生きる希望になるかもしれない。そう思えば、未来の事を教えるのだって悪いことばかりではないはずだ。

「そうですね……私の知っている範囲でならいいですよ」
「本当カ!?」
「いいの? 沖田さん」
「はい。夜間哨戒の退屈凌ぎに、ちょっとした小話程度の物ですが」

 そう言うと、和音はコホンと咳払いを一つしてから語りだす。

「まずは……そうですね、サーニャさんから」
「わたし? なんか、ちょっと恥ずかしいかな……」

 頬を赤らめるサーニャ。百合≠フ通り名に相応しいほどの可憐なウィッチだ。
 写真集が飛ぶように売れたというのも納得だな、と和音は思った。

「ええっとですね、サーニャさんは退役後、ピアニストとして世界各国で演奏会をされていました。なんどか扶桑にもいらっしゃって……あ、私も小さい頃サーニャさんのコンサートに行きましたよ」
「そ、そうなの?」
「サーニャのピアノは世界一だからナ!! やっぱりサーニャは凄いんダ!」

 火が出るほど顔を真っ赤にして黙ってしまうサーニャ。耳の先っぽまで赤くなっているが、使い魔であるネコの尻尾はものすごい勢いで左右に揺れている。嬉しさ半分、恥ずかしさ半分、といったところだろうか。

「それでそれで、サーニャのピアノはどうだったんダ?」
「サーニャさんにピアノですか? それはもう素晴らしかったですよ! チケットがあっという間に
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