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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第十話 夜間飛行@
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ビャグ中尉!?」

 誘導灯の明かりだけが頼りの滑走路で、サーニャがそう言って手を差し出す。
 無口なタイプだと思っていた和音は、思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。

「まったく、しょうがないナー。ほら、手繋いでやるから行くゾ」
「え!? ちょ、うわ! 待って、待ってください中尉――――っ!!」

 妙に不機嫌な顔つきになったエイラが、和音の手をひいて滑走路を奔ってゆく。あわててエンジンに灯を入れてついてゆく和音。一瞬、奇妙な浮遊感を覚えたと思った時にはもう、和音は二人に引っ張られるようにして離陸を完了させていた。

(び、びっくりした……)

 無事離陸できたことに安堵する和音。見る見るうちに基地の明かりが遠のいてゆく。

「雲の上に出ましょう。エイラ、沖田さんをお願い」
「しょうがないなー。ちゃんとついて来いヨ」
「は、はい!」

 エイラに手を引かれながら高度を上げる和音。雲の上まで出ないことにはどうにもならないのだ。

「ほら、雲を抜けるゾ」
「あ……」

 じっとりと湿った塊を突き抜ける。一瞬、息が詰まるような閉塞感を覚えたあと、恐る恐る和音は目を開いた。すると――

「わぁ……綺麗……」

 遥か和音の眼下に広がる、一面銀灰色の雲の海。静かに注ぐ月明かりに照らされたそれは、まるで一幅の絵画の如き幻想の美を醸し出していた。和音は、離陸の時にあれだけ怖気づいたことも忘れ、目の前に広がる夜の美しさに目を奪われていた。

「よっと……もう平気カ?」
「あ、ユーティライネン中尉」

 おもむろに期待を寄せてきたのはエイラだった。夜間飛行にも慣れた様子で、その挙動には淀みがない。

「わたしのことはエイラ、でいいゾ。スオムスじゃイッル、って呼ばれてたんだけど、こっちじゃみんなそうなんだよナ」

 器用に背面飛行を披露しながら言うエイラ。和音は水平に飛行するのがやっとである。
 そこにサーニャがそっと近づいてきて、歪ながらも編隊を組む格好になった。

「わたしも、サーニャって呼んでもらえると嬉しいかな、沖田さん」
「えっと……じゃあ、エイラさんとサーニャさん……でいいですか?」

 コクリ、と頷いて見せるサーニャ。
 と、横からエイラがグイッと顔を寄せてくる。

「なあなあ、坂本少佐から聞いたんだけどサ、お前本当に未来から来たのカ?」
「ダメよエイラ。あんまり聞いちゃダメってミーナ隊長にも言われたでしょう?」
「だ、だって……! やっぱり気になるじゃないカ!!」

 ムスッとふくれっ面をするエイラ。その表情を見て、和音はこの二人にも自分の事情が伝わっていることを知った。ミーナからあまり触れないようにと注意を受けていた、と言う事は、それとなく今までも気を遣っていてく
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